第8章 響かせろ、もっと遠くまで
天元さんは依然としてそのニヤニヤとした表情を顔に張り付けたまま
「何が書いてあったか教えてやろうかぁ?」
まるで私をおちょくるようにそう尋ねて来た。
…知りたい…でも知りたくない。…でも知らずにこうして笑われ続けるよりか…きちんと内容を把握した方が…まだマシかもしれない。
「…どんな…内容だったんです…?」
知りたい気持ちと知りたくない気持ちを天秤にかけ、知りたいという気持ちの方に気持ちが傾いてしまい、私は恐る恐る天元さんにそう尋ねた。
私のその言葉に天元さんはより笑みを深めた後(師範とはいえさすがに腹が立つ)
「手紙にはなぁ、お前の力を借りることになったからよろしく頼むってことと……」
天元さんは勿体つけるように言葉の間を開けた。
「もう!早く言ってください!」
「んな怒んなって。…”蝶屋敷を出る許可を得ることが出来たら荒山を食事に誘うつもりだ!師であるお前の許可は必要だろうか?”…だとよ!」
「…っ!!!」
似てないし。天元さん炎柱様の物真似してるけど全然似てないし。本物の炎柱様の方が全然格好い…じゃなくて!炎柱様…天元さんに何言ってくれちゃってるわけ!?
更には
「”ゆくゆくは恋仲になるつもりだ!その時改めて挨拶に行かせてもらう!”っだとよ!あいつ…っまじで面白過ぎ!」
だっはっはっはっは!
天元さんは涙を流し、お腹を抱え笑っている。一方私は、顔から火が出ているんじゃないかと思うほどに熱くなり、羞恥と怒りで体がプルプル震えていた。
…っ…あの人は…どうしてよりにもよって一番知られたくない天元さんにそんなことを言ってくれてるわけ…!?ただの師範と継子なんだから…そんな許可なんていらないこと位わかるもんでしょ…!
「…まっじで…あいつらし過ぎて…クッ…やっべ…腹痛ェ…っ…」