第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「…っ…それは…自分でもわかってます!胡蝶様にも炎柱様にも叱られました!でもあの時は…その方法が…炎柱様の邪魔にならないように援護するのには一番いい方法だと思ったんです!あんなに…あんな目で追うのがやっとの動きをされるとは…上弦が…あんなにも強いなんて…知らなかった…っ…だから私は、もう二度と同じ過ちを犯さない為に…もっと天元さんや炎柱様の役に立てるように…強くなりたいんですっ!!!」
感情が昂るのに伴い、自然と声が大きくなっていく。
「んなでけぇ声出さなくてもわかってるって。お館様にお前が刀を打ち直すための暇をもらえるよう許可はもらってある。忍の訓練をつけたのは俺だ。お前の動きが前と違くなったのも、日輪刀を扱いにくいと思うようになったのもその訓練が原因だ。お前の師として、お前が自分の実力を発揮できるように計らうことも義務のひとつだ。煉獄の機能回復訓練が終わったら刀鍛冶の里に行ってこい」
「…っ本当ですか!?ありがとうございます」
天元さんは適当に見えて本当によく私の事を見てくれていると改めて実感した。
…これで…もっと強くなれる…!
そんな喜びで、心がドキドキと沸き立った。けれどもふとおかしな点に気が付いてしまう。
「…あの…天元さん」
「……旨っ…お前、まじでいい団子屋見つけてくんの上手いな…で、何だよ」
天元さんは雛鶴さんがいつの間にやら持ってきてくれたお団子をパクリと一つ食べ後、今日何度目かわからない面倒くさそうな視線を私へと向けてきた。
「…どうして…炎柱様との機能回復訓練の事を…知ってるんですか?」
天元さんとのやり取りを振り返ってみるも、やはり私はまだ炎柱様との機能回復訓練について話した覚えは全くない。なのに先ほど天元さんは、”煉獄の機能回復訓練が終わったら”と、そうはっきり言っていた。
「お前が戻ってくるよりも前に、煉獄の鴉が文もって来たんだよ」
天元さんはそう言って、ニヤニヤと私の顔を見ながら笑みを浮かべている。その表情に
…絶対…碌なことじゃない
そう思わない訳がない。