第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「もう二度と…あんな思いはしたくない。私はもっともっと…強くなりたいんです!その為に私はこの日輪刀の形を変えたい!もっと今の私の動きに合うような…新しい形の日輪刀が欲しいんです!だからどうか…天元さんからお館様にその進言をしていただけないでしょうか…っ!」
そうすればきっともっと強くなれる。
そうすればきっと少しは前に進める。
そうすればもしかしたら炎柱様とのことも…
そんな邪な考えが浮かんできそうになるのをグッと胸の奥に深く沈め、私は天元さんの目を正面からまっすぐ見据えた。
天元さんも瞬きもせず、私の目をじっと見返してくる。
沈黙がしばらく続き、天元さんの探るような視線に耐えきれなくなってしまった私は、ゆっくりと視線を逸らした。
…っ…やっぱり…末端隊士の私がこんな我儘言っていいわけないよね…
"やっぱりいいです"と言うために口を開こうとした。けれども
「お前がそう言ってくる事は、もうとっくの昔に予想済みだ」
天元さんは呆れたような表情を浮かべながらそう言った。
「…へ?」
思ってもみない天元さんのその言葉に、私はただぽかんとその顔を見返すことしか出来ない。
「間抜けな顔してんじゃねぇよ。お前、俺を誰だと思ってる。音柱で祭りの神でお前の師である宇髄天元様だせ?お前の考えてることなんざ手に取るようにわかんだよ」
そう言いながら再び報告書へと視線を戻した。
「…どうして…わかるんです?」
邪魔をしてはよくないと思いながらも、どうしても聞かずにはいられなかった。天元さんは再び私へと視線を寄越すと
…はぁ
と大きく1度溜息を吐いた。そして
「…お前な?どこの世界に日輪刀なしで上弦に向かっていく馬鹿がいるってんだ。んな馬鹿お前ぇくらいだわ。無謀にもほどがあんだろ」
心底呆れたと言わんばかりの顔でそう言った。