第8章 響かせろ、もっと遠くまで
こうなれば当然
「2人共。鈴音が天元様と話が出来なくて困ってるでしょ。せっかく鈴音がお土産を買ってきてくれたんだからお茶でも入れましょう。こっちに来て手伝ってちょうだい」
3人のまとめ役である雛鶴さんが呆れたような表情を浮かべながらこちらにやってきた。
「…はぁい」
もの凄く渋々とした様子で須磨さんが天元さんの腕からその手放し
「ほら!早くしな!」
そんな須磨さんを急かしながらまきをさんは雛鶴さんの待つ台所へと向かっていった。
"雛鶴さぁん!私みたらしがいいです!"
なんて言っている須磨さんの声を聞きながら、声のする方に向けていた視線を天元さんへと戻し
「相談したい事があります」
その赤茶色の目をじっと見据えながらそう言うと
「相談?なにを相談してぇっつぅんだ?」
天元さんはそう言いながら広げていた報告書をたたみ、座卓に片肘をつきながらそう言った。
「相談は、2つあります」
「2つぅ?面倒臭えなぁ…で、なんだよそよ相談って」
なんだかんだで面倒見がいい天元さんは、なんだかんだで聞いてくれる気満々なのだから優しい。
「…まず一つ目は、日輪刀の事です」
そう言いながら私は、腰にさしていた日輪刀を鞘ごと抜き、座卓の上にコトリと置いた。
天元さんは座卓に置かれた私の日輪刀をじっと見た後、私の顔へと視線を戻した。その視線が、話を進めるようにと暗に示していることを理解した私は口を開く。
「…この間の上弦ノ参との戦いで、私はこの日輪刀を使う事ができませんでした」
「んなもん報告書にかいてあったから知ってるわ。で、それがなんだよ」
あの時の戦いがふいに頭をよぎり、悔しさと、自分に対する憤りに近い感情がじわりと胸の奥から湧いてきた。
「…"あの時もし"と…そう考え出したらキリがない事は十分わかってます。それでも、あの時もし、私がこれをもっと使いこなせていたら…もっと違った結果になってんじゃないかって…そう思うんです」
そう言いながら刀の柄をギュッと強く握る。