第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「…善逸にそんなこと言われるなんて、私もやっぱりまだまだだなぁ」
「あ!またそうやって俺に酷いこと言う!姉ちゃん酷い!でも好き!」
「はいはい。それはもうわかったよ」
結局、私が炎柱様への気持ちを抑える方法はわからなかった。けれども、善逸と久々に任務以外で時間を共に過ごし、最近の任務での出来事、そしてじぃちゃんとの昔話に花を咲かせ、つかの間の楽しいひと時を過ごしたのだった。
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甘味屋で雛鶴さんまきをさん須磨さん(ついでに天元さん)にお土産を買い、善逸と別れた私は音柱邸へとたどり着いた。
いつものように
「ただいま戻りましたぁ」
母家の玄関を開け、自身の帰宅を知らせるためそう声をかけた。ふと、足元に視線をやると、そこには天元さんがいつもはいている履き物が僅かに乱雑な様子で置かれているのが目に入った。
…天元さん…帰ってきてるんだ。
万が一誰かとあんな事やこんな事をしている音を聞いては大変だと思い、屋敷全体の気配を探ろうと、なるべく耳はすまさずに気配を探ってみる。
…気配は…居間に4つともある。ということは、そのまま中に入っても大丈夫そう。
私は草履を脱ぎ、母家の廊下を進み居間へと向かった。
「ただいま戻りました」
そう声をかけると
「「おかえり、鈴音」」
「おかえりなさい鈴音ちゃん!」
雛鶴さんまきをさん須磨さんが同時にこちらを向きながら私の帰宅を出迎えてくれた。
天元さんはと言えば、神妙な顔をしながら報告書か何かを書いている様子だった。
…機能回復訓練と日輪刀の打ち直しについて聞きたかったんだけど…今はやめた方がいいかな…?
そう思いながら天元さんのことを見ていると
「なんだぁ。俺になんか用でもあんのか?」
私の視線に気がついた天元さんが、報告書から顔を上げ、私の方へと視線を寄越してくれた。