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音の溢れる世界でいつか【煉獄さん】【鬼滅の刃】

第8章 響かせろ、もっと遠くまで


甘じょっぱく、絶妙な塩梅のみたらし団子はいつもの通り美味しいはずなのに、このぐちゃぐちゃになった心のせいか、いつもほどの美味しさを感じることが出来ない。


…なんで…こんなことでこんなにも悩んでるんだろう


少し前の自分には、自分がこんなことで悩むことになるとは想像もできなかった。男性を好きになることも、ましてやその相手が、苦手なはずの体格がよくて声が大きい、加えて人との距離感がおかしい男性だとは。しかもその人物は、所属する鬼殺隊で最も位の高い”柱”の一人であり、名家の嫡男と来た。


「…身の程をわきまえろって感じ…」


そんなことをぼそりと呟きながら、相変わらず普段の美味しさを感じることが出来ない大好きなみたらし団子に噛り付いた。


「まぁ姉ちゃんの気持ちもわからなくもないけどさぁ。あの人なんかすんごい周りにきらきらしたものが飛んで見えるくらい眩しいし、女の子の隊士にめっちゃ人気あるし……あぁ羨ましい!すんげぇ羨ましい!」


そう言いながら善逸は、自棄を起こしたかのように串に刺さったお団子をまとめて3つ口に入れた。


「でしょ?あんな人、好きになることすらおこがましいのに…恋仲なんて…考えられるわけないじゃん」



”私と炎柱様が恋仲になる”


そんなの、炎柱様のご親族も、鬼殺隊に籍をおき、炎柱様に憧れを抱くたくさんの隊士たちも認めるはずがない。だって私は、家を追い出された身寄りのない女で、隊士としての才能もあまりない。独自に編み出した響の呼吸も、同じ雷の呼吸の派生である音の呼吸に比べてしまったら、なんとも地味で強くもない。できることと言えば、探知、援護、回避、どれも一人で鬼と戦えるものではない。

そんな私が炎柱様と恋仲になんてなった日には


「…暴動が起こりそう…」


想像するとなんとも恐ろしく、背筋がぞっとした。そんな私の様子を、善逸は

じーっ

と、そのこげ茶色の目で見てくる。



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