第8章 響かせろ、もっと遠くまで
そんな私に
「いいよ。姉ちゃんになら…何言われても許してあげる。っていうか本心じゃないなんて、俺にはちゃんとわかってるし!」
善逸はそう言って、情けなくも優しくも見える表情を私へと向けてくれる。そんな善逸の様子に私はホッと安心感を覚えた。
「善逸任務終わりだよね?蝶屋敷に来たってことはどこか怪我でもしたの?」
ぱっと見た感じでは、怪我をしている様子は見られず、首を傾げ善逸にそう尋ねた。
「怪我はしてないよ。実はさ、俺と炭治郎と伊之助、あれ以来ここで生活させてもらってるんだよね」
「え?3人とも?蝶屋敷で?」
「そ!…そうだ!姉ちゃんもおいでよ!」
善逸はさも名案が浮かんだと言わんばかりの顔で、目をキラキラと輝かせながら私にそう言って来た。
「来なよって…蝶屋敷に?」
「そう!音柱のところにいるって言ってたけど、毎日稽古つけてもらってるわけじゃないんでしょ?」
「…それは…そうだけど」
最近の天元さんは調査でとても忙しいらしく、帰ってこないことも多い。なので私は独りで稽古をしたり、雛鶴さんまきをさん須磨さんの誰かに付き合ってもらう事が多かった。
「だったらいいじゃぁん!ね?ね?お願いっ!」
「……」
善逸とはもちろん一緒にいたいと思う。ここまで自分を包み隠さずさらけ出せるのは善逸だけだ。それに、じぃちゃんの家で共に修行を積んでいたころのように切磋琢磨し合える自信もある。
「そうすれば昔みたいに任務がないときは一緒に鍛錬できるし、何より俺が寂しくない!そうだよ!そうしようよぉぉぉお!」
そう言いながら私にへばりついて来る善逸に
相変わらず困った子だなぁ…
なんて思いながも、その姿を懐かしいと思っていた。
善逸とまた一緒に過ごせるとしたら楽しいに違いない。でも私にとって、あの場所も、雛鶴さんまきをさん須磨さん、そして天元さんと過ごす音柱邸も、同じくらい大切な場所になってしまっていた。