第1章 始まりの雷鳴
「…俺、実はずっと気が付いてたんだけど」
隣に座っている善逸が、同じように私の日輪刀を見つめ、
「姉ちゃんは”聴くとき”、相当集中してるから気が付いてなかったと思うんだけど、呼吸を使ってるときに姉ちゃんが”聴く耳”に切り替えると、呼吸音が少し変わるんだ」
善逸のその言葉に私は思わず大きく目を見開いた。
「…何それ?全然知らなかったんだけど…もっと早く言ってよ」
「ごめん!でもさ、姉ちゃん、自分で気が付いてるかなって色々考えてるうちに言う機会逃しちゃってさぁ」
「…そういうことね。私さ、自分の音は聴けないことはないんだけど、色々な音が聞こえ過ぎて気分が悪くなっちゃうんだよね。だから無意識に遮断してるみたいで基本的には聴こえないんだ」
「そうなの?」
「でもそういう話であれば、あとで自分でもちゃんと聴いてみないとね。教えてくれてありがとう」
私と善逸がそんな会話をしていると、
「今の柱の中に雷の呼吸の派生を使う柱がいたはずじゃ。確か……そうじゃ、”音の呼吸”じゃ」
「音の呼吸?」
じいちゃんのその言葉に、
”音の呼吸”…なんて私にぴったりな呼吸なの!
思わずそう思ってしまった。
「そやつの話を聞けば、お前さんが自分に適した呼吸を掴む手掛かりが何か見つかるかもしれん。わしからお館様に文を出し、そやつと引き合わせてやろう」
じいちゃんのその提案に、今後の自分の為に、そうしてもらうことが一番であることは理解できた。けれども、
「もし、私に適しているのが雷の呼吸から派生した何かの可能性が高いのであれば…私はまず、このじいちゃんに教え込まれた雷の呼吸をもっと使いこなせるようになりたい」
救ってもらった恩返しとか、そんな感情ではなく、”基本の呼吸”と言われるものを使いこなせることなくして、応用である”派生の呼吸”を自分が使いこなせるとは思えなかった。