第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「私に、胡蝶様の調合した毒を分けてもらえないでしょうか?」
「私の…毒をですか?」
そう。私は今日、胡蝶様に日輪刀を見せてもらい、話を聞く為と、胡蝶様が調合した藤の毒を、今後定期的に分けてもらえないかを相談するためにここまできた。
あの戦いで、自分に足りないものがなんなのか、嫌と言うほど思い知らされた。特に、先程胡蝶と話した通り、私には力が足りない。その分速さに特化した戦い方、そして天元さんから授かった忍の技術を駆使して戦うしかない。
…それでもまだまだ…私には足りない。
第三者の力を頼りにするのは些か情けなく、狡さのようなものも感じる。それでも、そんなことよりも、もう二度とあんな風に目の前で大切な人が傷つけられる姿を見たくなかった。
「…はい。図々しいお願いだと言うことは…理解しています。それでも…どうか…どうかお願いします!」
胡蝶様の目をじっと見つめ、その後、太ももに額が触れるほど深く頭を下げた。
…断られたらどうしよう。
そう心配していたのにも関わらず、ほとんど間を置かずに
「いいですよ」
胡蝶様はそう答えた。
「…え?いいんですか?」
あまりにもあっさりと”いいですよ”と言われてしまい、不安になった私がそう尋ねると
「はい。かまいません」
今度はにっこりと笑みを浮かべながらそう言った。けれども
「そのかわり、私からのお願いを聞いて頂きたいのですが」
意外にも、胡蝶様も私にお願いがあると言った。考えるまでもなく私の答えは決まっており
「聞きます!毒をわけてもらえるのであれば…なんでも、どんなことでも聞きます!」
間髪入れることなく私はそう答えた。
そして、内容も聞かずにそう答えてしまった事を、数十秒後、心の底から後悔することになる。
「あら。本当ですか?それは良かったです!カナヲや炭治郎君達だけだけでは、中々手に負えなくて、もう1人機能回復訓練を手伝ってくれる人材が欲しかったんです。荒山さんなら適任に間違いありません」
パチンと手を合わせ、嬉しそうにそう言う胡蝶様に反し
…機能…回復訓練……?
嫌な予感が頭をよぎり、私の額にジワリと汗が滲んだ。