第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「…私も、刀を打ち直してもらうことは出来るのでしょうか…」
腰に刺してある自分の日輪刀を両手に持ち、じっと見つめながらそう言うと
「今回の任務の報告書は、柱全員はもちろんのこと、お館様も目を通されているはずです。荒山さんの師範である宇髄さんを通してお館様に進言すれば、恐らくそれも可能かと思われます。それでももし足りないようなことがあれば、私からも荒山さんの日輪刀を打ち直すべきだと進言しましょう」
胡蝶様はそう言って私に微笑みかけてくれた。
思ってもみない胡蝶様のその言葉に
「…そう言ったもらえて…とても嬉しいのですが…どうして私の為にそんなことまで?」
思わずそう尋ねてしまった。そんな私に胡蝶様は
「あなたと私は、少し似ています。力がない分、他の方法で補い鬼と戦う。そんなあなたを、私は同じ剣士として応援しています。体格が理由なんかで…戦う事を諦める必要も、引け目を感じる必要もありません」
まるで自分に言い聞かせているようにも聞こえる口ぶりでそう言った。そんな胡蝶様の言葉が
「…ありがとう…ございます…!」
私はただただ嬉しかった。
「お礼なんていりません。ところで、荒山さん専用の特殊な日輪刀を打ってもらいたいのであれば、ある程度どんな日輪刀にしたいか構想を練っておく必要があります。どんなものがいいか、案はあるのでしょうか?」
「はい。それはもうバッチリです!」
形状、長さ、そして重さ。あの戦い以降、私の中でそのイメージは段々と出来上がっていき、どうしてもそれを現実の物としたかった。
「そうですか。では、あとは鉄珍様にお願いをするのみですね。いいお返事がもらえる事、私も陰ながら祈ってます」
「はい!ありがとうございます」
日輪刀の話はこれで済んだ。けれども、私にはまだ、胡蝶様にお願いしたいことが残っていた。
「…あの、胡蝶様」
「はい。なんでしょう?」
話の流れから、もう用は済んだと思われていたのだろう。胡蝶様は不思議そうな顔をしながら一旦は外した視線を、再び私の方へと戻してきた。