第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「荒山さんも、私と同じように小柄で非力なタイプに見えますからね。聞きましたよ。日輪刀が重くて動きにくいからと、刀も持たずに上弦ノ参と戦ったとか」
胡蝶様のその言葉に、思わず肩が大きく揺れ
「…っ…どうして…それを…」
視線を左右に揺らし、モゴモゴとしながらそう尋ねてしまう。
「煉獄さんと炭治郎君から聞きました。まったく。随分と大胆な事をする方ですね。噂では、冷静沈着な方と聞いていたのですが、どうやらそうじゃない面も持ち合わせているようですね」
ドキッ
"煉獄さん"という単語に、胸が大きな音を立て反応した。なんとかそれが顔に出てしまうのは堪え、胡蝶様の何やらお説教にも近いようなその口ぶりに
「…すみません…」
まるで気を逸らすように謝罪の言葉を述べていた。
「謝ることではありません。あの方法が、あの場において荒山さんが考えついた最善の方法なのでしょう?ですが鬼を倒し、身を守るための最大の武器である日輪刀を安易にその身から離すのは良いこととは言えません。それをご自分でも理解してらっしゃるからこそ、私の日輪刀を見たいとそう仰っているのですよね?」
「…その通りです」
あの上弦ノ参との戦いでの最大の反省点。それは日輪刀をちっとも使いこなせなかったことだ。もしあの時私がクナイや爆玉だけでなく、日輪刀をきちんと扱えていたのなら、あるいはもっと炎柱様の役に立てたのかもしれない。
「私も、もっと軽くて、自分の動きを阻害しない、特性を活かせるような日輪刀が欲しいと…そう思いました」
「…そうですか」
胡蝶様はそう言いながらゆっくりと刀身を鞘に収めていき
「私の刀は、刀鍛治の里の里長である鉄地河原鉄珍様が打ってくれたものです。鉄珍様は、私や同じ柱である甘露寺蜜璃さん、そしてあなたの師範である宇髄さんの日輪刀、言ってしまえば特殊な形状の日輪刀を打ってくれる方です」
パチン
…あ、今の音好き。
小気味の良い音を立て完全にそれをしまった。