第7章 溢れた想いの行先は
「ところで荒山。俺は君に感謝をしてはいるが、同じ位腹を立てている。何故だかわかるな?」
「…退避命令を無視したことですよね?」
話題が変わり、ほっとした私は、冷静な思考能力が戻ってきたようですぐにその答えに至ることが出来た。
「わかっているなら何故あの時命令を聞かなかった」
炎柱様はほんの少し語気を強めそう言った。
「…その件につきましては、あの時も言いましたよね?私には私の任務があると」
「君の任務とは何だ?無限列車の鬼の討伐ではなかったのか?」
「…違います。私はお館様に炎柱様の補佐をするよう命じられたんです。直属の上官である天元さんにもそうするように言われました!だから私はその2人の命令に従っただけです!なので炎柱様に怒られる必要なんてありません!」
キッと炎柱様を半ば睨みつけるようにしながらそう言うと、炎柱様は私の言葉に驚いているのか、通常でも大きいと感じるその目をさらに大きく見開いていた。
「…お館様が荒山にそう命じたのか?」
「はい。直接任務を下された訳ではありませんが、天元さんを通して、そうするようにと命じられました。だから私は炎柱様の命令ではなく、お館様と、自分の師範の命令を優先したまでです。なのでお説教を受けるつもりは…少しもありません!」
どうだ参ったか!
心の中でそう思いながら、炎柱様をじっと見ていると
「そうか…ならば仕方ない」
炎柱様は私を叱ることを辞めてくれたようだ。
「わかっていただけでなによりです!それで、報告書とはどれですか?」
炎柱様は一瞬キョトンとした表情を見せ
「…うむ!そうだ!報告書だな!」
そう言いながらその長い腕をグッとベッド横の机に伸ばし、その上に置いてあった紙を私の方へズイッと差し出してきた。
…さっきのわざとらしい言い方…明らかに怪しいでしょう
そう思いながら差し出されたそれを受け取り目を通すと、手を加える必要が何処にあるんだろうかと思ってしまうほど完成に近い状態だった。