第7章 溢れた想いの行先は
私の乱れた呼吸音だけが部屋に響き、それ以外に目立った音は聞こえず、お互い言葉を発さない時間がしばらく続いた。
けれども
「…成る程。君はずっとそう思っていたのか。そう思っていたならば、何度呼んでも来なかったのも納得が行く」
炎柱様がその沈黙を破った。
あれだけ私が失礼な態度を取ったにも関わらず、炎柱様はちっとも気にする様子もなく顎に手を当てふむふむと1人納得している様子だ。
そして
「先程泣いていたのもその思い違いが原因か?」
平然とした様子で私にそう聞いてきた。
「…っ泣いていません!」
「いや、泣いていただろう。子どものような嘘をつくんじゃない」
「…っ!」
泣いていたのは事実であり、嘘をつくなという言葉に思わず口を噤む。
「……っなんですその言い方!?私のこと…馬鹿にしてるんですか!?」
「馬鹿になどしていない。君は少し落ち着いた方が良い」
「落ち着いてます!」
興奮気味な私に対し炎柱様は全くもっていつもと同じ口ぶりで、それが更に私の心を乱していく。
「そのどこが落ち着いているんだ。君は、戦っている時はあんなにも冷静なのに、普段は子どもっぽいんだな。だがそんな所が俺にはとても可愛らしく思える!」
炎柱様は、そう言って私に向けにっこりと太陽のような明るい笑みを向けてきた。
「……はい?」
…今…炎柱様…私の事…可愛らしいって…言った…?
何かの聞き間違いかと思った。念のため、確認するように
「可愛らしい?…今…可愛らしいって…そう言ったんですか…?」
私がそう尋ねると
「あぁ。君は可愛らしい」
はっきりとそう言った。
…聞き間違い…じゃ…ないの…?
それでも信じられなかった。
「私がですか…?」
「うむ。君がだ!」
「…えっと…すみません…ちょっと…意味が…わからないです…」
言葉の意味は理解できているはずなのに、その内容を脳が理解しようとしてくれない。炎柱様といる時、なぜか私は頻繁にこうなってしまう。