第7章 溢れた想いの行先は
一度アオイさんに案内され訪れた部屋の前まで、炎柱様に手を引かれ連れてこられた。ここまで連れて来られて逃げようと思う程、私も馬鹿ではない。それになによりも、私がここで逃げるそぶりでも見せれば、炎柱様はきっと私を追いかけてくる。
…炎柱様に無理をさせるわけにはいかないよ…
そう思い、私は大人しくガラリと扉を開ける炎柱様の背中を見ていた。
炎柱様はスッと身体を横にずらし、扉から部屋へと続く道を開け
「入るといい」
私に中へと入るように言った。そう言った炎柱様の顔をチラリと見上げると、笑顔ではあるが圧迫感と有無を言わせぬ雰囲気をふつふつと感じた。
「…お邪魔します」
そう言って私が恐る恐る中に入ると、その後に続くように炎柱様も中に入り
パタリ
静かにその扉が閉められた。
…どうしよう…。
炎柱様に素直に従いここまできたものの、どうして良いのかわからず私はただぼんやりと突っ立っていることしか出来ない。そんな私に
「そこに座るといい」
炎柱様が座るように示したのは、私がこの間こっそり腰掛けさせてもらった折り畳み式の椅子だった。
「すまないが、あまり起きていると胡蝶に叱られてしまうからな。俺はベッドに座らせてもらう」
「…はい」
私が大人しく炎柱様の指示通りに座ったのを見届けると、炎柱様は先程の言葉の通りベッドの淵に、私と向き合うように腰掛けた。
やっぱりまだ…あんま動き回ったらダメなんじゃない…。なのにあんな所まで来るなんて…。
そんなことを考えながらジーッと炎柱様を見ていると
「何か言いたそうな顔だな?」
炎柱様はジーッと私の事を見返してくる。その視線の熱さに
「…っ…そんなことは…ありません」
思わず言葉が詰まってしまった。そんな私に炎柱様は
「そうか!だが俺は君に言いたいことが沢山ある!」
いつものはっきりとした口調でそう言った。
…何を言われるのだろう。
思い当たることが沢山ありすぎて、絞ることは出来なかった。