第7章 溢れた想いの行先は
「…っえ?」
突如聞こえて来た声に驚き、パッと顔をあげそちらへと視線を向ける。向けた視線の先にいたのは、扉に寄りかかり、じっと真剣な表情でこちらを見ている炎柱様だった。
……どうして…炎柱様が…?
あまりも驚いてしまった私は、善逸にくっついたまま動けず、ただぼんやりと炎柱様の姿を見ることしかできない。
炎柱様はほんの少し眉間に皺を寄せ
「荒山と我妻少年は、姉弟弟子関係とはいえいささか距離が近すぎやしないだろうか?」
炎柱様はそう言いながらこちらへと近づいてくる。状況が飲み込めず、立ち尽くしたままの私に反し
「…っすみません。今すぐ離れます」
善逸は一瞬で部屋の隅に逃げるように移動していった。だんだんと近くなる炎柱様との距離に
…っやだ…今は…会えるような状態じゃない!
ようやく自分の置かれた状態を理解した私はグッと足に力を込め、この場から逃げようと試みた。けれどもそれよりも早く
パシッ
「…っ離して…ください」
そんな私の行動は最初からお見通しだと言わんばかりに、炎柱様の手が私の手首を掴みそれを阻止した。
ブンブンと腕を振り、その手を振り解こうと試みるも、怪我をしているとはいえ炎柱様の力に私が叶うはずもなく
「離さない」
全く離してくれる気配はない。
「…っもう少ししたら…こちらから部屋に伺いますので」
弟弟子に甘え、情けなく泣いている顔なんて見られたくなかった。
それなのに
「だめだ。今連れて行く」
炎柱様は全くもって引いてくれる気配はない。
あぁ…このやり取り…凄く覚えがある。こうなったら…この人は絶対、私の意見なんて聞いてくれやしない…。