第7章 溢れた想いの行先は
私が弱かったから。
私のせいで。
もっと出来ることはなかったのか。
するべきことはなかったのか。
ずっと。ずっと。意味がないとわかっていても。天元さんや胡蝶様にあぁ言われても。自分を責める気持ちがずっと拭えなかった。
"仕方のないこと"
そう悲しげに言った炎柱様の声が、横顔が、頭にこびりついて忘れられない。
善逸は私の両手をギュッと握り締め
「…鈴音姉ちゃん?どうしたの?なにかあったんなら俺に話してよ?俺たち2人きりの姉弟弟子でしょ?」
私の情けなく下がってしまっている眉と同じくらい下がった眉をした顔が、私のそれを優しく覗き込んでくる。
「…善逸…っ私…!」
そんな弟弟子の優しさに、ずっと我慢していた気持ちがとうとうひょっこりと顔を出し
ツーっ
急激に迫り上がってきた涙が一筋、目の端からこぼれ落ちてしまった。
「イヤァァァ!なになにどうしたの!?なんで泣くの!?姉ちゃーん!」
泣き出した私を抱きしめ、善逸は慌てふためいている。そしてそんな善逸に釣られ炭治郎君も動揺しているのか、オロオロと手を忙しなく動かしている。
けれどもそんな中
「お前、どうしたんだ?腹が減ってんのか?饅頭食いたくて泣いてんのか?」
「馬鹿伊之助ぇ!そんなわけあるかぁ!」
伊之助君はやはり伊之助君だった。
「…鈴音さん。どうしたんですか?俺たちでよければなんでもお話聞きますから」
そんな炭治郎君の優しい言葉が私の涙を余計に誘い、我慢しないとと思っているはずなのにポロポロと次々と涙が溢れ出てきてしまう。
私…なんでこんなところで泣いてるんだろう?…こんな事なら…善逸のところになんか来るんじゃなかった…
そんなことを考えながら、無駄だと分かっていても、これ以上泣いている情けない顔を見られたくなくて、善逸の身体に押し付けるようにして泣き顔を隠した。
だから私は気がつくことが出来なかった。
「荒山は俺に用があってここに来たのだろう?すまないが彼女を借りて行く」
炎柱様の気配が、この部屋に近づいて来ていたことに。