第1章 始まりの雷鳴
鉄穴森さんは善逸が座ったのを確認すると、
「それでは、これが鈴音さんの日輪刀です」
太い紐で縛られた、私の身長の半分くらいある木箱を私に向けスッと差し出した。
「ありがとうございます」
自分の心臓が大きな音を立てているのを感じながら、その木箱を両手で丁寧に受け取る。
ずっしりと…重い。
その重みが、これから自分が担っていく使命の重さのように感じ、私は思わずその箱をぎゅっと抱きしめた。
「ほれ。開けてみなさい」
「はい」
じいちゃんに促され、箱を座卓に置き、紐をスッと引っ張る。すると頑丈そうな紐にも関わらず、驚く程それはすんなりと解けた。
解けた紐を箱の横に置き、
パカッ
と蓋を開けると
「…きれい」
ため息をつきたくなる程に美しい刀身がその姿を表した。そして私は、
このきれいな刀身、どんな音がするんだろう
それを確かめたい衝動に抗えず
「あの…弾いてみてももいいですか?」
私は我慢できずに鉄穴森さんにそう尋ねてしまう。
「…はい、構いませんが」
ひょっとこのお面で、その表情を直接確かめることは叶わないが、声色からして、鉄穴森さんは私の問いに困惑しているようだった。
「この子は少し変わった趣向の持ち主で…音を聴くのが好きなんじゃ」
じいちゃんは呆れたような声でそう言った。
「ごめんなさい!でも…見てこのきれいな刀身!絶対、絶対素敵な音がするの!」
そう興奮気味に言う私に、
「姉ちゃんはこういう時、凄いいい顔するよね。変な人だと思われるからあんま外でしない方がいいよ」
善逸が言ったその最もな言葉と、
「わかってるよそんなの…」
3人から浴びせられる視線に若干の恥ずかしさを覚えながら日輪刀を左手で持ち、右人差し指で刀身を弾く。すると、
キンッ
と私の胸をくすぐる音が聴こえた。
…良い。ものすごく…素敵な音がする。
右頬に手を置き、
はぁ
と感嘆のため息をつきながら日輪刀をみていると
「…っ!?」
すぅっと、まるで私の手から熱が伝わっていくかのように下から刀身の見た目が変化して行った。