第7章 溢れた想いの行先は
すみちゃんに善逸達が療養していると言う部屋の場所を聞き、私は蝶屋敷に来る時よりは僅かに軽く感じる足取りでそこへと向かった。
部屋の側まで来ると、聴くまでもなく大きな話し声が廊下まで漏れ出ていて
…まったく。怪我人なんだから大人しくしてなさいよね。
呆れたような、けれども元気そうな様子に安心感を覚えながら私は部屋の扉をガラリと開き
「みんな、調子はどう?」
部屋の中を覗き込んだ。
「あぁぁあ!姉ちゃん!来るのが遅いー!!!」
3人仲良く並んでベッドに身体を起こした状態でそこに居た。
「善逸。相変わらずうるさいね」
ニコリと微笑む私に
「またもや辛辣ぅ!でもそんな姉ちゃんもやっぱり好きぃ!!」
善逸は相変わらずな様子だった。
部屋にお邪魔させてもらい、奥から善逸、炭治郎君、そして伊之助君の順番に仲良く並べられているベッドへと近づく。
善逸達に渡してほしいとすみちゃんに渡されたお饅頭を渡すと、真っ先に伊之助君がそれに飛びつくように手をつけ、善逸がすかさずそれに噛みつき、炭治郎君がそんな2人を宥めていた。そんな3人の姿はやはりどこか既視感があり、なんだか自分が音柱邸にいるような気がして私は不思議と心が落ち着いていくようだった。
けれども。
「鈴音さん、もう任務に復帰してるんですよね?俺たちよりもよっぽど激しく戦っていたのに…強い人はやっぱり凄いです!」
炭治郎君のそんな言葉に、私はふっと現実に引き戻される。
…私が強い?…そんなこと……少しもないのに
炭治郎君が発した言葉は、私を褒めてくれたはずの言葉なのに、なぜか私には自分を責められているような気がしてならなかった。
「…鈴音さん…?」
「姉ちゃん…どうしたの?」
そんな私の気持ちが、顔に、そして音に出てしまっていたようで、炭治郎君が心配げに私の名を呼び、善逸がベッドから降り私に近づいてくる(伊之助君はどうでも良いと言わんばかりにお饅頭を頬を膨らませながら貪っている)。