第7章 溢れた想いの行先は
いつまでもこんなところにいても仕方ない…行こう。
意を決し、ガラリと蝶屋敷の扉を開け
「こんにちはぁ」
声を掛けながら中に入ると、奥の方からパタパタと可愛らしい足音が近づいて来る。
…この足音は…ん?あの3人のうちの…誰だったかな?
そう思考を巡らせていると
「あ、荒山さん!お元気そうで良かったですぅ」
姿を見せてくれたのはすみちゃんだった。
「こんにちは、すみちゃん。あの、お世話になったお礼にお饅頭を買ってきたの。蝶屋敷のみんなで食べて?」
そう言ってすみちゃんにお饅頭を差し出すと
「わぁ!ご丁寧にありがとうございますぅ!みんなきっと喜びます!」
すみちゃんはニコニコしながらそれを受け取ってくれた。そんな姿を
…すみちゃん…可愛いなぁ…。
ほくほくした気持ちで見ていると、和は蝶屋敷に入る際に飛んでいったと言うのに、相変わらず私の右肩にとまっている真っ黒い瞳の持ち主が
じぃぃぃぃぃ
まるで
"そうじゃないだろう"
と言わんばかりの視線を私に寄越して来ていた。
「…それと、炎柱様に…会いに来ました…」
…私は全然会いたくないんだけど。
「炎柱様にですね!荒山さんが来るかもしれないことは伺っていましま!それにしてもらこんなにたくさんありがとうございます!炭治郎さん達もまだ療養でここにいるので一緒に食べさせてもらいますね」
「…"炭治郎さん達"ってことは、善逸もまだいるのかな?」
「はい。いらっしゃいますよ」
チラリと右肩に止まる炎柱様の鴉の方を向き
「…先に、善逸達に会ってきても良いでしょうか?」
そう遠慮気味に問うと
「良いだろう。…逃げてもすぐわかるぞ。杏寿郎様をこれ以上待たせるな」
そう言って一旦私の肩を降り、狭い室内を器用に飛び、何処かへ行ってしまった。行き先は恐らく炎柱様のところだろう。その姿が完全に見えなくなった後
「…怖っ…」
思わず自分で自分の身体を抱きしめそう言ってしまった。
すみちゃんはそんな私の様子を、困ったように眉を下げながら見ていた。