第7章 溢れた想いの行先は
ぎゅむっ
「んむっ!」
腕を広げ迫ってきた須磨さんの胸元に勢いのまま飛び込むと、須磨さんの柔らかな胸に顔が埋もれてしまい変な声が出てしまう。
「…鈴音ちゃん…良かった…良かったですぅぅぅ!私、鈴音ちゃんが脚を怪我したって聞いて心配で心配で!もう夜も眠れない気分だったんですぅぅぅう!」
「…っ…しゅま…しゃん…!」
ぎゅうぎゅうとそのたわわな胸に顔を押し付けられ私がまともに喋れないでいると
「ちょっと須磨ぁ!鈴音が苦しんでんでしょ!力を緩めな!っていうかあんた家にいる時普通に寝てだろう!?何大袈裟なこと言ってんの!」
スパンっ
「っ痛ぁい!まきをさんがぶったぁぁあ!」
数日しか離れていなかったのに、やけに懐かしく感じてしまうやり取りが始まり私の顔は思わず緩んでしまう。
もちろんそんな2人のやり取りを止めに入るのは
「もう。あなた達2人とも、いい加減にしなさい。鈴音は療養から帰ってきたばかりなのよ?そんなに騒いだら怪我に触るかもしれないでしょ?ほら、離れて離れて!」
まきをさんと須磨さんとは違い、こんな時でも足音を立てず、忍らしく気配をほとんど感じさせずにやってきた雛鶴さんだ。
「っと!そうですよね!」
「…ぷはぁっ!」
須磨さんの胸元から解放された私が顔を上げると
「改めまして、お帰りなさい!鈴音ちゃん!」
ニッコニコの笑顔で私の顔を覗き込んでくる須磨さんと
「おかえり。思ったより元気そうでよかったよ」
私の頭のてっぺんにポンと手を置いてくれたまきをさんと
「鈴音。手、洗ってきて。あなたの好きな餡子のお団子、みんなで食べるために買ってあるの」
優しい笑みを浮かべた雛鶴さんが私のことを見ていた。
「…もう!雛鶴さんまきをさん須磨さん…みんな好き!大好き!会いたかったです!」
だった3日しか離れていなかったのに、私はまるで長い間ここを離れていたようなそんな錯覚を感じてしまう程、私はこの場所が好きで好きで堪らなくなっていた。
そして心の片隅で
炎柱様にもこんな風に気持ちを伝えることが出来たらいいのに
一瞬そんなことを考え
…そんなこと、出来るわけないのに。…馬鹿みたい。
すぐさまその考えを打ち消した。