第7章 溢れた想いの行先は
「…炎柱様、まだしばらく動けませんよね?私はもう任務に復帰しますし、任務で忙しいと言えばそう簡単に呼び出すことも出来ないでしょう?だから大丈夫です」
ニコリと微笑みながらそう言う私に
「…貴方もまた、困った人ですねぇ」
胡蝶様は言葉の通り困ったような笑みを浮かべていた。
"貴方もまた"というの言葉が些か気になる言い方ではあったが、胡蝶様相手に到底口で敵うはずもないのでその気持ちをグッと胸の奥に押し込んだ。
「それでは、荒山さんの太ももの治療は以上で終了となります。また何かあれば、気軽に来てください」
「お世話になりました」
「まだ無理はされないようにお願いしますね」
「…善処します。それでは、失礼します」
椅子から立ち上がり、頭を深く下げ、私はお世話になった蝶屋敷後にした。
蝶屋敷を出ると、私はどこにも寄ることなく真っ先に音柱様邸へと向かった。
大した怪我を負ったわけでもないのに、3日も療養させてもらったせいか体力は有り余っており、いつもよりもかなり早いペースで音柱邸へと向かう。
…雛鶴さん、まきをさん、須磨さんに…早くあいたい…っ!
3人とも私のことをとても心配していたと天元さんが言っていた。けれども、療養期間は3日だけだったし、本当に様子見のための療養だったため、お見舞いに来てもらうことはお断りしていたのだ。
だから3人に一刻も早く私のこの元気な姿を見せたかった。
…見えてきたっ!
見慣れた建物が目に入ると、自然と私の走るスピードは速くなる。
そしていよいよ音柱邸の門を潜り、扉を開け
「…っ雛鶴さん!まきをさん!須磨さん!…ただいま戻りましたぁ!」
いると決まっているわけでもないのに、私はそう大声で言いながら扉を勢いよく開いた。
すると
ダダダダダダダダダ
忍が住んでいる家とは思えないほどの大きな足音が屋敷の奥から聴こえ
「鈴音!」
「鈴音ちゃぁぁぁあん!」
まきをさんと須磨さんが駆け足で私の元に走ってくるのが見えた。
「…っまきをさん!須磨さん!」
私は草履を脱ぎ捨てるように脱ぎ、駆け寄ってきてくれるまきをさんと須磨さん向け同じように駆け出した。