第7章 溢れた想いの行先は
翌日。
暇を持て余した私が縁側で草木の音を聴いていると
「姉ちゃん」
後ろから静かに声を掛けられたれた。振り返るまでもなく、考えるまでもなく声の主が誰かなんてわかる。
「…頭の怪我、大丈夫?」
「今んとこねぇ。でもしのぶさんが頭は大事だからよく様子を見ろって」
そう言いながら善逸は私の隣に腰かけた。
「結構血ぃ出てたからね。炭治郎君はどう?」
「さっき見たときは寝てた。煉獄さんほどじゃないけど、炭治郎も結構な怪我だったみたいだからねぇ」
善逸の口から何気なく発せられた”煉獄さん”という言葉に、私の胸が
ドキリ
と大きく音を立てる。
…やだ…っこんな音立てて…善逸相手じゃ…全部筒抜けだよ…!
私は善逸に何も聞かれまいと
「それで!最終戦別を突破してから、どんな感じでここまでやって来たの?」
なんでもないような顔をして、善逸にそう尋ねた。
「…もう地獄のような日々だったよ…任務の合間を見て鈴音姉ちゃん探してたけど全っっっ然見つかんないんだもん!なんで探しに来てくれなかったの!?どこで何してたわけ!?俺の事なんてどうでもよかったのぉぉお!?」
私の望んだとおり、善逸は私の発した音について何か言ってくることはなかったが、その代わりまるで恨み言でも述べるかのように私の事をじぃぃぃっと目に涙を浮かべながら見てくる。
「いやね。私だって善逸の事はずっと気になってたよ?でも…実は私、音柱の宇髄天元さんの所で色々と教えてもらってるんだ」
私がそう答えると
「は?音柱?何それ?誰それ?」
善逸は物凄く嫌そうな顔をしながらそう尋ねてくる。そう尋ねられた私は、師範である天元さんの姿を頭に思い浮かべてみた。
…天元さん…天元さんかぁ…。
「音の呼吸の使い手で…音柱で…派手好きな元忍…かな?」
結果として導き出された天元さんを形容する言葉がこれだ。
「…っ何その怪しすぎる説明文!?全くもって何も伝わってこないんだけど!?姉ちゃん大丈夫!?もしかして弱みでも握られたとか!?」
私の説明不足とは言え、あまりにも不安気な表情の善逸が面白く
「…あははっ!」
私はお腹を抱えて笑ってしまった。