第7章 溢れた想いの行先は
…お礼を言われるようなこと…何にも出来てないのに…。私がもっと頑張れてれば炎柱様に…あんな顔をさせなくて済んだかもしれない…。
そんな風に考えていると、知らぬ間にぎゅっと強く自分の下半身に掛かっている掛け布団を握りしめていた。
胡蝶様はそんな私の様子に気が付いてくれたのか
「どうかしましたか?」
私にそう尋ねてきた。
その優しい声色に、この自分のいかんともしがたい気持ちを吐き出してしまいたくなった。けれども
…そんな情けないこと…胡蝶様に言えるわけがない
そう思った私は
「…なんでもありません」
そう答えた。そんな私の様子に胡蝶様は無理に聞いてくるようなことはせず
「そうですか。けれどももし、何か話がしたいと思ったら、なんでもお話して下さいね。隊士の精神的支えになることも、柱として、そして蝶屋敷を取り仕切る者としての役割の一つですので」
そう言いながら私に微笑みかけてくれたのだった。
「…ありがとうございます」
「はい。それでは足の状態を見たいので、お布団を捲らせて頂きますね」
胡蝶様はそう言って私の足に掛かっている掛け布団を静かに捲った。ちょうどその時
ガラッと扉が開かれ、私、そして胡蝶様は同時にそちらへと視線を向けた。
そこにいたのは
「随分派手な格好してやがるじゃねぇか」
「天元さん」
見廻り明けにここまで来てくれたのか、天元さんの姿がそこにはあった。
「宇髄さん。いくら継子とは言え荒山さんは女性ですよ。不用意に扉を開けるのは辞めてください」
「へいへいわかったよ。…それよりお前、なんだよその格好。どんな戦いしたらそんなふうに隊服が破けんだ?」
天元さんの視線がじーっと私の脚へと注がれている。
「…あんまりじろじろ見ないでください。エッチ」
「俺がお前なんぞの脚をそんな目で見るかボケ。俺の継子の癖に未熟だって言ってんだ」
「それはそれで失礼なのではないですか?」
「そうですよねぇ胡蝶様。この隊服は自分で破いたんです!だから未熟でもなんでも…」
"なんでもない"
そう言おうと思ったが、それ以上言葉が出てこなかった。