第7章 溢れた想いの行先は
先ほど目が覚めた病室に戻り、再び布団に潜り込んだ。
…炎柱様…凄く…悲しそうな顔してた。…あんな顔……初めてみた。
悲しげなあの顔が頭から離れず、私は炎柱様の剣士としての命を守れなかった後悔と情けなさで胸が潰れてしまいそうだった。
入口の方に背を向け、布団の中で丸くなっていると
コンコン
扉叩く音が聞こえ
「失礼します」
つい先程まで炎柱様と話していたと思われる胡蝶様が私のいる病室へとやってきた。
声を掛けられ私は横になっていたベッドから慌てて上半身を起こす。そんな私に向け胡蝶様は
「まだお疲れでしょうし、寝ていたままで構いませんよ」
そう言いながらゆっくりとした足取りで私の元へと近づいてきた。胡蝶様はそのまま私の隣までくると、診察用の道具をベッドの横にある棚に置き
「具合はいかかでしょうか?」
と私の目をその可愛らしい顔を傾け、のぞき込むようにしながら尋ねてきた。
「…あ…特に、太もも以外は…今のところ特段おかしなところはありません。しいて言えば…まだ少し眠いです」
私がそう答えると胡蝶様は
「本当に…驚くほどにぐっすり眠ってらっしゃいましたね。声を掛けても全然起きないので、どこか悪いのかと心配してしまいました。あの眠り方は、普通とは言えません。なにか思い当たることはありますか?」
そう私に質問を投げかけながら箱の中からカチャカチャと色々取り出している。
「私も最近気が付いたんですけど、私、多分集中力を使いすぎると、そのあと反動で異様な眠気に襲われてしまうみたいで…以前もちょっと河原で居眠りをしてしまったことがあったんです」
「成程そういうことですか。まぁ一般的に考えても、人間とは物事に集中すると疲れを感じるものです。荒山さんは今回の任務において、かなり煉獄さんの助けとして活躍してくれたようですからね。煉獄さんの助けになって頂いたこと、同じ柱としてお礼を言わせてください。ありがとうございました」
「…っ…」
思わぬ胡蝶様からのお礼の言葉に、私は何も答えることが出来なかった。