第7章 溢れた想いの行先は
炎柱様はそんな2人のやり取りをベッドに腰掛け、じっとシーツを睨むように見ながら黙って聞いているようだった。
「もちろん私、そして医療班の方達で最善の手当ては施しました。けれども、私たちができるのは私たちの手の範囲が届く箇所だけ。表面はなんとかできても、中身は…内臓はそうもいきません」
「…そんな…っ…」
胡蝶様のその言葉に、思い当たる事は確かにあった。
…肋骨が折れた…あの時?それとも…拳を止め切れなくて真っ正面から受けてしまったあの衝撃波…?
原因がどちらにせよ、あれらの攻撃が炎柱様の内臓をひどく傷つけてしまった原因になっている事は明らかだ。
「恐らく全く使えないというわけではありません。訓練次第では今までの…良くて半分くらいでしょうか…その程度までは回復出来ると思われます」
「…っ…半分…」
炭治郎君は胡蝶様のその言葉に、酷く驚き、そして悔しそうな表情をしていた。そしてそれは私も同じだった。
「すべては自分の力不足が招いた事……仕方のないことだ」
"仕方のないこと"
そう言った炎柱様の声は、明らかにそう自分に言い聞かせているようにしか聞こえず、私の目には言葉に反して悔しそうに震えている炎柱様の拳も見えてしまっていた。
生きてさえいればそれでいい
私は確かに自分でそう言ったはずなのに。炎柱様のその震えた拳を目にすると、悲しさを懸命に抑えて発したその言葉を耳にすると
…私は…炎柱様の命は守れたかもしれないけど……剣士としての命を……守ることは……出来なかった
そう思わずにはいられなかった。
私はそれ以上その場にいることが出来ず、ゆっくりと後退りをし、先程まで自分がいた部屋に、肩を落としとぼとぼとと戻る他なかった。