第6章 生きてこの先の刻を共に
そんな私の代わりに
「大丈夫だ善逸。鈴音さんは、疲れて眠たいだけだ」
そう炭治郎君が答えてくれた。
「……は?」
「…ん…善逸…悪いんだけど…膝…貸して…?」
「膝?何?膝枕しろってこと?」
「…ん…」
「……いやいいよ。いいけどさ。人がこれだけ心配したっていうのに眠いだけってなにさ。さっきの俺の気持ち返してよ」
そんな風に文句を言いながらも私に膝枕をしようとしてくれているのか
「炭治郎、禰󠄀豆子ちゃん、そっちに戻しても平気か?」
私の胴体から腕を離し、立ち上がった。
「あぁ。善逸。禰󠄀豆子を守ってくれてありがとう」
「好きな子を守るのは男として当たり前だろ」
そんなやり取りに
あぁ、善逸は禰󠄀豆子ちゃんのことが好きんだ。そっかぁ。
そんなことを考えていると、コックリコックリと船を漕いでいた頭を
グイっ
と優しく引き寄せられた。
その力に抗うことなく従い、導かれた少し硬くて、それでも温もりを感じる膝に左頬を横たえた。
「は?」
「え?」
それと同時に善逸と炭治郎君の驚いているような声が聞こえた気がしたが、ようやく横になり、身体の力を抜くことを許された私にはそんなことを気にする余裕はもうなく
「…善逸…温かい…ありが…とう」
膝を貸してくれたお礼を述べ、頭だけでなく上半身を預けるようにもぞもぞと身体を動かし落ち着く姿勢を探した。
「…やはり猫女」
「え…いや…姉ちゃん?…それ…俺じゃ…ひっ!黙ります!黙りますから…っそんな目で睨まないで!」
意識をもうほとんど手放してしまっている私には、善逸が何をそんなに慌てふためいているのかを理解することが出来きず、優しい手つきで頭を撫でられとてもいい気分になっていた。そして
「…ゆっくりおやすみ」
初めて聴いたときは嫌悪感に近い気持ちを抱いていたのに、今ではその声が聴こえると安らぐような、それでいてときめくような、そんな気持ちになってしまう声にそう言われ
「…炎柱様が…生きていてくれて…本当に…良かった…」
最後にそんな事を口走った後、私は眠りの世界へと完全に身を委ねたのだった。