第6章 生きてこの先の刻を共に
けれどもその時
ブチブチブチッ
ガキンッ
「…あっ!」
陽光に気が付いた上弦ノ参は、自らの腕を引きちぎり、人間では到底不可能な角度で蹴りを放ち、炎柱様の日輪刀を蹴り飛ばした。
「…っ待て!」
炎柱様は森の中に消えて行くその姿を追って行こうとしていたようだが
…終わった…
「…鈴音さん!!!」
力尽き、前のめりに倒れていく私の様子に気が付くと弦ノ参を追いかけるのを止め、私の身体を支えてくれた。
力の入らない身体を何とか動かし立ち上がろうとするも、どうにも力が入らず炎柱様に両肩を支えられながらその場にぺたりと座り込んでしまう。
「大丈夫か?」
炎柱様のすっかりと、掠れてしまった声でそう尋ねられ
「…人のこと…心配してる場合じゃ…ない…ですよ?炎柱様が…一番、重症…なんですから…」
相変わらず自分のことはそっちのけのそんな様子に、チクリと小言をお見舞いした。けれどもその間も、急激な眠気に襲われた私は、頭をこくりこくりと倒したり起こしたりと、船を漕いでしまっていた。
「…眠いのか?」
「……ん…」
神経を研ぎずまし、ひたすら音を聴き続け、私の頭は極度の疲労でもう意識を失う寸前だった。
「…和に…医療班を呼ぶように…言ってあるので…もうすぐ…くるはず…だから…そのまま…みんなおとなしく…」
「言いたいことはもうわかった。君はもう休むといい」
炎柱様にそう言われ、その言葉に素直に従い目を瞑ろうとしたその時
「姉ちゃん!!!!!」
善逸の大声が聞こえ、私はゆっくりと声がした方に顔を向けた。
そこには禰󠄀豆子ちゃんが入った箱を背負い、目を見開きボロボロと涙を零しながら私をじっと見ている善逸の姿があった。
「…善逸…目が…覚めたみたいで……良かった」
そう言いながらヘニャリと私が笑いかけると
「…嫌だよ!お願いだから…鈴音姉ちゃん…俺を置い…死なないでよ!」
私のすぐ横に両膝を着き、ぎゅっと腰回りに抱きついてきた。
…死ぬ?…私が…?…え?何で?…人って…眠すぎても…死ぬの?
疲れと眠気で思考が正常に回らない私はそんな素っ頓狂なことを考えていた。