第6章 生きてこの先の刻を共に
あれだけ気持ち悪いと、一刻も早く消えてほしいと思っていた触手の残骸と肉塊がクッションとなり、酷い横転具合にも関わらず車両の内部は思った以上に大きな被害を受けることがなかった。けれどもそれは、勿論肉塊だけのおかげではなく
…炎柱様…やっぱり…凄い人だ
私とは比べ物にならない、いや、比べてしまうのが恥ずかしいと思える程沢山の技を出し、車両の被害を抑えてくれた炎柱様のお陰だ。
…取り敢えず、まずは一度外に出てみよう。
被せそうな場所まで瓦礫を避けながら移動し
「…っよいしょ!」
私は車両の外に出た。そして直ぐに
「…和っ!」
自身の鎹鴉である和を呼び寄せた。
バサっバサっバサっ
聴き慣れた羽音が徐々に大きくなり
バサっ
「鈴音!良かった!良かったのぉ!心配したのぉ!」
私の肩にとまった和は、鴉なのにボロボロと涙を流しながら私の頬にスリスリと頬ずりをしてきた。
「なんとかね。和も無事で良かった…もしかしたらついて来れてないかなと思ったんだけど、大丈夫だったみたいね」
「途中まで風の当たらないところに隠れてたのぉ」
「成る程ね。…で、疲れてるところ悪いんだけど、直ぐに医療班を呼んできてくれる?…乗客の怪我の程度はまだ全然把握出来てないんだけど、可能な限りたくさん呼んでくれると助かる」
「任せて!直ぐに行ってくるから、鈴音も無茶しないでねぇ」
「うん。よろしくね」
「いってくるのぉ!」
バサっ
和は張り切った様子で飛び立つと、あっという間に豆粒のように小さくなり見えなくなってしまった。
…よし。乗客の様子を見て回らなきゃ。
私は脱線した車両を一つ一つ見て回り、重症者がいないかを確認して回った。後方の車両から回って行き、大多数の乗客が怪我を負っていたものの、幸運なことに、命の危険がありそうな乗客は一人も見当たらなかった。
…炎柱様…どこに行ったんだろう?
後方車両の方にいたはずの炎柱様の姿が確認できず、気配を探ってみると車輌の先頭部分の方にそれを感じることができ、炭治郎君と伊之助君の元へ向かったのだと察しがついた。
…無事で良かった。まぁ…当たり前か。
無事炎柱様の気配を感じることが出来た私は、引き続き車両を見て回ることにした。