第6章 生きてこの先の刻を共に
その時
フッと視界にウネウネとは違う動きをしたものが見え、そちらに視線をやると
「猪突猛進ー!!」
飛び起きた伊之助君の姿が目に入った。
「…っ伊之助く…!?」
声をかけようとしたが、伊之助君は起きるや否や叫び声を上げ車両の天井に
ズシンッズシンッズシィィン
頭突きをし、穴を開け外に出て行ってしまった。
「……すご」
そんな伊之助君のあまりの行動に、こんな状況にも関わらず私はポカンと固まってしまう。
…炭治郎君も伊之助君も…積極的で凄いな…。
二人の血気盛んな様子がとても羨ましいと感じた。
私はいつもどこか冷めている。そのお陰か冷静に事を分析する能力には長けているかもしれない。でも私は、そんな姑息な自分が堪らなく嫌いだった。
私も…炭治郎君や伊之助君のように、熱い心の赴くまま、誰かの為に何かをしたい…。
そんな事を考えていると
「荒山、ぼんやりしている暇はないぞ」
聴こえてきた声に、ひどく安心感を覚えたのと同時に
"耳心地が良い"
そう思ってしまう自分の心に、蓋をしたくなる。
…あんなに苦手で、怖いとすら思っていたのに…どうしてかな。
そんな事を考えているとはおくびにも出さず、日輪刀を構え触手のような気色悪い肉塊を睨み付けながら
「遅いお目覚めですね。炎柱様って、意外と寝起きが悪いんですか?」
相変わらず可愛くない言葉が口をついて出る。
「そんな事はない。俺は寝起きがとてもいい方だ」
そう言う炎柱様は、慌てた様子もなく、私と背中を合わせるようにしながら日輪刀を構え車両をぐるりと見渡した後、
「よもやよもや…うたた寝している間にこんな事態になっていようとは。…柱として不甲斐なし」
怪しく蠢く肉塊の中を悠然と歩き始めた。チラリと盗み見た炎柱様のその後ろ姿に
「穴があったら……入りたいっ!!!」
私は猛烈に心を惹かれ、目を奪われた。けれどもそんなことをしている暇があるはずもなく
…私も行かなくちゃ。
シィィィィイ
「雷の呼吸参ノ型…聚蚊成雷!」
炎柱様が去って行った逆の方向へ、私も技を放ち進み出す。