第6章 生きてこの先の刻を共に
……まつ毛、私よりもずっと長い。
綺麗な寝顔をこのまま見ていたいと思う自分がいた。
…っこんな状況で、私は一体何を考えてるわけ!
そんな馬鹿げた感情を心の底に沈め
「炎柱様!起きて下さい!炎柱様!」
その両肩に手を置き、揺すり起こそうと試みる。けれどもその特徴的な眉がほんの少し動いただけで、覚醒するまでには至らない。
「もう!炎柱様!鬼です!お願いだから起きて下さい!」
それでも段々と目覚めに近づいてきているようで、炎柱様は何かを言おうとしているのか口元が微かに動き始めた。反射的にその口元に耳を寄せてしまい、聞こえてきた言葉は
「…せん…ろ……」
「…っ!」
"千寿郎"
弟さんの名前だった。
思い出されるのは、あの日河原でおにぎりを食べながら家族のことを話してくれた炎柱様の表情と、駒澤村で偶然出会い、炎柱の様子を訪ねてきた、弟さんの表情。
…私が必ず、炎柱様を千寿郎君の元に帰してあげるからね。
気がつくと私は、炎柱様の左眉を、右手の親指の腹でなぞるように撫でていた。
「…っ!」
けれどもすぐに我に返り、
…私…寝ている炎柱様に勝手に触って…っ…何してるんだろう。
急いでその手を引っ込めた。
その時。
「…っ!?何!?」
突然、車両の壁や床がまるで生き物のような気色の悪い姿に変化し始めた。そしてそこから次々と、触手のように沢山の細長くウネウネとしたものが生えてきた。
…なに、なんなの!?最近私、こういう形状の鬼との遭遇率が高過ぎない!?
ウネウネと伸び気持ち悪い動きをする。こう言う生き物が私はものすごく嫌いだ。
「…もう…気持ち悪い!」
そんな文句を言っていると
"禰󠄀豆子ー!ナオさーん!眠っている人たちを守るんだぁあ!"
どこからか炭治郎くんの叫び声が微かに聞こえ、私は炎柱様を守るようにしながら日輪刀を構えた。