第6章 生きてこの先の刻を共に
やけに自信あり気にそう言う炭治郎君の顔を、首を傾げながら見ていると
「俺は人よりも鼻がいいんです。この切符の匂いを辿ればすぐに鬼のいる場所がわかるはずです。だから鈴音さんはもしもの時のために一刻も早く煉獄さんを起こして下さい!善逸と伊之助は禰󠄀豆子が起こします!」
私の目をまっすぐ見据えながらそう言った。
正直に言って、まだ私よりも弱そうに見えてしまう炭治郎くんが一人で鬼を見つけたとしてどうにかなるとは思えない。けれどもそれは私が行ったとしても同じこと。
今は炭治郎君の言う通り、炎柱様を起こすことが最優先だ。
「…わかった。でも絶対に無理はしないでね」
「はい!禰󠄀豆子!もし何かあったら、禰󠄀豆子も鈴音さんと一緒に戦うんだ」
そう言ながら炭治郎君は禰󠄀豆子ちゃんの頭を一度撫で、車両の連結部へ向かい駆けて行った。
炭治郎君の背中が見えなくなり、私は未だ起きる気配が見られない炎柱様、善逸、そして伊之助君を順番に見遣る。
…3人とも、どんな夢を見ているんだろう。
炎柱様の顔に視線を戻すと、眉間に皺を寄せ心なしか辛そうな顔をしている気がした。そんな顔を見ていると、"一刻も早く起こしたあげたい"とそう思ってしまう。
「…この3人を…何とか起こさなくちゃね」
私がそう言いながら禰󠄀豆子ちゃんに笑いかけると
むぅ!
と力瘤を作りとても張り切った様子を見せてくれた。
「…っもう!かわいい!」
禰󠄀豆子ちゃんが人間ではなく、私達鬼殺隊の敵である鬼であることは十分に理解していた。けれども、そんなことは重要でないと思えてしまうほどに、禰󠄀豆子ちゃんのその可愛らしい仕草や、笑顔にメロメロになってしまう。
…こんな気配の持ち主である禰󠄀豆子ちゃんが…悪い鬼のはずがないもんね。
そうは言ってもいつまでも呑気に禰󠄀豆子ちゃんを愛でているわけにはいかない。依然として座席に腰掛けながら眠っている炎柱様を覗き込むと、少し覚醒しかけているのか、眉がほんの僅かだが動いたように見えた。