第6章 生きてこの先の刻を共に
そう言えば、天元さんが少し前の柱合会議の時、鬼殺隊士と鬼の兄妹の裁判が執り行われたって言っていた気がする……あ、だから常識を覆されるものが見れるって言ったのか。
炭治郎君と鬼である妹の禰󠄀豆子ちゃんの姿を目にし、私は天元さんが言っていた"常識を覆されるもの"の内容を理解した。
「…炭治郎君と…妹さんの事…だったんだね」
そして更に、この車両の気配を探った時に感じた不思議な気配の正体と、目の前にいるなんの害もない、むしろ友好的な気配すら感じる鬼の少女、禰󠄀豆子ちゃんの気配が合致することに気がついた。
あの日裁判から帰ってきた天元さんは、鬼を連れて歩いていたという隊士にくだされた裁判の結果に対し、完全には納得していないように見えた。けれども私としては、お館様がお認めになっているのであれば問題ないのではと思っていたし、正直に言って自分には関係のないことだとあまり真剣に考えていなかった。
その自分の考えが、あながち間違っていなかったのだと、禰󠄀豆子ちゃんの気配をそばで感じることで実感する。
この子…禰󠄀豆子ちゃんの気配は…今まで遭遇したことのある鬼とは…全然違う。嫌な音が、雰囲気が全然しない。道理ですぐそばに居たのに気づかなかったわけだ。…きっと炎柱様も気づいていて、それで問題ないと思っていたはず。
私が日輪刀の柄から手を離すと、炭治郎君は安心したのか、
はぁぁぁ
と大きな溜息をついていた。
「ごめんね。少し驚いちゃって」
そう言いながら禰󠄀豆子ちゃんの頭を優しく撫でると
むぅーむぅー!
ニコニコしながら何かを言っているようだ。
嫌だ…禰󠄀豆子ちゃんかわいい…!
そんな仕草に、こんな状況にも関わらず、私の胸はキュンっとときめいてしまう。
「良いんです!それよりも早くみんなを起こして鬼を探さないと!」
「…と、そうだね。私が鬼を探しに行く。だから炭治郎くんは炎柱様たちをお願い」
そう言った私に向け、炭治郎君は首を左右にフルフルと振ると
「俺が行きます」
そう言った。