第6章 生きてこの先の刻を共に
「…自分の…首を…切って…自決…して…ください…」
「自決…?…その言葉に…嘘はない?」
グッとクナイ力を込め、その切っ先を柔らかい首にほんの少し突き刺す。
「…っはい」
怯えた様子で答えるその子は、嘘をついているようには見えなかった。
「わかった。じゃあ行っていいよ。…乱暴な事をしてごめんね」
クナイを下ろし、その背中を私から離すようにトンと優しく押す。
「…っえ?」
驚いた様子でクルリと振り返った男の子から、また何か変な動きをされる前にとサッと跳躍し距離を取りる。
スタッ
地面に片足がついたと同時に自分の日輪刀を鞘から出し
ザシュ
「…っうぁぁあ!」
…目の前でごめんね。でも、時間が惜しいの。
心の中でそう言い訳を並べ、驚き叫ぶ男の子に背を向けながら、一切の戸惑いもなく自分の首に日輪刀を押し当て、そのまま思いっきり刀を引いた。
そうすることに恐怖を感じなかったわけではない。それでも、その恐怖の気持ち以上に、一刻も早く元の場所に戻らなくてはという思いの方が遥かに強かった。
「…っ!」
目が覚めるや否や、状況を確認しようと私は周りをキョロキョロと見回した。目の前にいる善逸と伊之助君はまだぐっすり眠っており、反対側にいる炎柱様もまだ目覚めていないようだった。
けれども、
「鈴音さん!起きたんですね!良かった!」
私よりも先に起きていたのか、炭治郎君がとても安心した表情でそう言った。
「…炭治郎君…良かった!起きて…っ!?」
ふと目に入った、炭治郎君の隣にいる"女の子"の存在に、私の手は咄嗟に日輪刀の柄を握りしめていた。
…この女の子は…鬼!?
そんな私の行動に炭治郎君はとても慌てながら
「鈴音さん…っ!違うんです!禰󠄀豆子は俺の妹で…!」
鬼ではあるが妹、という禰󠄀豆子ちゃんとやらの前に立ち、私から庇うようにその背にサッと隠した。