第6章 生きてこの先の刻を共に
けれどもきっと、この炎柱様の姿も、私が心の奥底で抱いてしまっていた願望が作り出した偽物以外のなんでもない。
私は…休みの日に炎柱様に音柱邸まで迎えにきてもらって、2人で食事に行きたいと…恋仲になりたいと…そう望んでるってことね…。
馬鹿げてる。
滑稽だ。
私がそんな事を望むなんて、烏滸がましいにも程がある。
そう思ったその時
ボッ
私の腹部と太腿、そして腰の辺りに、慣れ親しんだ感覚が戻ってきた。ズボンの切れ目に手を突っ込み、クナイを一本取り出す。
こんな馬鹿馬鹿しい世界、すぐにでも終わらせてやる。
そう思い、私は私の作り出した虚像の炎柱様に返事をする事なく、
「…っ荒山!?待つんだ!どこへ行く!?」
探りあてた音の持ち主の元へと急ぎ向かった。
気配を絶ち、バレないように背後に近寄り、その様子を伺う。
…まだ…子どもじゃない…あんな子がどうやって?
どう見てもその子どもは鬼には見えなかったし、どこか悲壮感を漂わせていた。けれども、この世界から抜け出すには、今のところその子どもしか鍵になるものが思い当たらなかったし、手に持っている刃物から、こちらに危害を加えようとしていることが見てとれる。
…躊躇してる時間はない。
クナイをグッと構え、私はその子どもとの距離をグッと詰めた。
チャキッ。
「正直に言いなさい。ここは何処であなたは誰?」
「ヒッ」
「正直に答えないと…徐々に…力を加えていくから」
首にクナイを軽く当てがい、脅し文句を並べる。我ながら酷い事をするものだとは思うものの、他にいい方法は思いつかない。
「…っごめんなさい…俺…」
「謝罪の言葉は…いらない。私はこの世界から抜け出す方法を知りたいだけ。それ以外のことは…今はどうでも良いから」
我ながら冷たくて、嫌な女だと思う。それでも私は、今私がするべきこと、そしてしたいことをする。私がしたいこと、それは
"炎柱様の助けになりたい"
ただそれだけだ。