第6章 生きてこの先の刻を共に
「…炎柱様が…私を迎えに?どうしてですか?」
「はぁ?どうしてもこうしたも、煉獄に飯に誘われたって言ってたのはお前だろう?」
天元さんはそう言って、私の顔をじっと呆れた顔をしながら覗き込んだ。
そんな事…任務終わりならともかく、迎えにきてもらってわざわざ一緒に食事に行く?私と、炎柱様が?…炎柱様は代々続く鬼狩りの名家の嫡男だもの。私みたいな身寄りのない、そうでなくても可愛げのない女とそんな恋仲まがいの事をするべきじゃない。炎柱様の人生を邪魔するようなことなんて…したくない。そう思ってる私が…炎柱様と…食事に…?
もうわかっていた。
こう思ってしまう時点で、自分が炎柱様に恋心を抱いてしまっていることに。
あり得ない。
そんなわけない。
そうやって自分に言い聞かせれば聞かせるほど、それが自分の中に生まれてしまった炎柱様に対する恋心を自覚することに導いていた。それでも、決してそれを言葉にしないようにと頑張ってきたはのに。
…善逸のあの反応は…だめだよ。
先程の善逸の反応は、明らかに私の心臓の音が炎柱様に好意を持っているそれだと気がついての反応だと言うことが嫌でもわかった。
まさかあんな形で自分の気持ちを証明されちゃうなんて………ん?
私はそんな自分の思考回路に猛烈な違和感を感じた。
どうして私は今この場にいない善逸の言葉を、まるで今さっき言われたことのように気にしているの?
「おい、どうしたんだよ」
黙って動かなくなった私の顔を天元さんが覗き込んできた。
「……天元さん。私、どうして炎柱様と…食事に行くことになったんでしょう?」
私がそう尋ねると
「はぁ?お前と煉獄、恋仲になったんだろう?そしたら食事に行くなんざ普通の事じゃねぇか」
「…っ!」
やっぱり…絶対におかしい!
そう確信を得た私は
ふぅ
一度息を吐き、目を瞑り耳をすませた。