第6章 生きてこの先の刻を共に
炎柱様、炭治郎君、善逸、伊之助君の切符を切っていく車掌さん。4人に倣い私も切符を差し出した。けれども
…何か…おかしい気がする…
何かはわからない。それでも、切符に改札鋏を向けられた途端、ものすごく嫌な感じがした。咄嗟に私が手を引っ込めようとしたその時
「…っ…!!!」
車掌さんが私の腕をガッと掴んだ。まさか一般人である車掌さんにそんなことをされると思っていなかった私は、反応が遅れ、されるがまま
パチン
切符を切られてしまう。慌てて手を引っ込め炎柱様達の方へ視線を向けると、さっきまで普通に会話をしていたはずなのに、ぐっすりと眠ってしまっていた。
…やっぱりこの人、鬼側の人間だったんだ…!
そう気がついた時にはもう手遅れで
…やだ…何?…急に…眠気が…
私は急激に襲ってくる眠気に抗うことが出来ず、半ば倒れる様に座席に座り込んだ。
「…貴方!一体…っ…!?」
そう言いながらなんとか顔を上げるも
「…やった!…やったぞ!これで…夢を…家族に会えるんだ…っ!」
嬉しそうにそんな事を言いながら、あっという間に走り去ってしまった。
…炎…柱……様……善……逸……
霞んでいく意識の中、炭治郎君と肩を並べて眠っている炎柱と、伊之助君に足を乗せられながらもスヤスヤと鼻提灯を作り眠っている善逸の方へと手を伸ばしたが
だめ……寝ちゃ……だ……め……
次の瞬間にはフッ全身の力が抜け落ち、私の意識も抗うことのできない眠りの世界へと沈んでいった。
「荒山、お前いつまでんな地味な格好でいるつもりだ。さっさと着替えろ」
気づくと私は音柱亭の居間にある座卓の前に座っていた。
…私は…どうして…ここに?
グルリと部屋を見回してみても、いつも天元さん雛鶴さんまきをさん須磨さんと過ごしている居間の様子と何ら変わりはない。
「何キョロキョロしてんだ?もうすぐ煉獄が迎えに来んだろ。さっさと準備しろや」
私はその言葉に違和感を覚え、天元さんの方に顔を向けた。