第6章 生きてこの先の刻を共に
"美味い"!
一体何を食べているんだろう。…美味しいのはわかるけど、車内であんな大声を出すのは…明らかに人の迷惑でしょ。
そう思いはしたものの、やはり以前と違って"嫌悪感"の様なものは一切感じなかった。それどころか、"仕方ない人"と、炎柱様に対して若干の可愛さのようなものを感じている自分がいた。
…そんな風に思うようになっちゃったなんて……困ったなぁ。
ドキドキと騒ぎそうになる胸をグッと沈め
"美味い"!
私は声の発生源であるここから奥の車両へと向け足をすすめた。
車両の扉を開け、目に入ってきたのは
「美味い!」
座席の上から覗く、未だに何かを食べていると思われる炎柱様の派手な頭。そして、
「あのぅ…煉獄さん」
困惑した様子で、通路の真ん中に立ちながら炎柱様に声を掛けている市松模様の羽織を着た隊士と
「美味い!」
うそっ!あのタンポポみたいな黄色い頭って…!
ずっと会いたいと思っていた弟弟子の姿がそこにあった。
今すぐ駆け寄りたい気持ちをグッと押さえ込み、
任務中、今は任務中。
と自分に言い聞かせ、
「美味い!」
私はそんな3人…と、猪頭の非常に変わった風貌の隊士に近づいて行った。
「炎柱様。ここは列車の中です。そんなに大きな声で美味い美味い言っていると、周りの方達に迷惑ですよ」
私がそう声を掛けると、炎柱様、市松模様の羽織を着た隊士、そして善逸の顔が一斉に私の方へと向いた(猪頭の隊士は列車から見える外の様子が気になって仕方ないのか、私が炎柱様に声をかけたことに関して全く関心がないようだ)。
炎柱様から善逸の方へと目線を移し
「善逸…っ久しぶり!」
私の視線と善逸の視線がパチリと合った。