第6章 生きてこの先の刻を共に
炎柱様はどこにいるんだろう。
和から炎柱様は既に乗車していると聞いていた私は、車両を移動しながらその姿を探していた。
…やっぱり、駅でもそうだったけど人も多いし、音もうるさいし…聴きたい音が全然拾えない。
聴きたい音に集中しようとしても
ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ
ガタン…ガタン…ガタン…ガタン
聴こうとすればする程にやかましい列車の音が頭に響き
「…全然集中できない…っ!」
全くもって私の聴く耳は役に立たなくなっていた。おまけに響の呼吸を使おうとしても、上手く音の波が広がってくれないようで
「…とっちらかってて…わかんない…っ!」
耳よりはいくらかましだが、気配を探れるのは精々1両が限界だった。
はぁぁぁあ
列車の中での任務では、私のこの能力はほとんど役に立ちそうになく、自分でも驚くくらい大きなため息が口から漏れ出てしまった。
まぁでも、今回お館様から私に与えられた任務は気配を探ることじゃなくて
"炎柱煉獄杏寿郎を補佐しろ"
って内容だもん。出来ないことは潔く諦めて、今回はそっちに集中しよう。
天元さんが言うには、今回のこの任務には炎柱様と私、そしてまだ鬼殺隊士としては駆け出しとも言える新人3人と、5人編成での任務だと言うことだった。それに加えて天元さんは
"常識を覆されるようなもん見せられるから覚悟しておいた方がいいぜ"
と何やら意味深なことを言っていた。
はっきり言ってくれればいいのに。天元さんはそう言うのを面白がって濁して伝えてくるから意地が悪いよね。
そんなことを考えながら車両を移動していると
"美味いっ!"
私が向かっている車両の更にもう一つ奥の方からそんな声が聞こえ、
「…ここまで聞こえてくるって…声、大きすぎでしょ」
思わず苦笑いがこぼれたのだった。