第5章 名前の知らない感情は
「はい、これどうぞ!」
その言葉とともに須磨さんから差し出された麻袋を受け取り
「中、見てみな」
まきをさんに促され
「…はい」
受け取った麻袋の中身を確認してみると
「…これ!こんなにたくさん」
8本のクナイと、パッと見ただけでは何個入っているのかわからない程沢山の玉が入っていた。
クナイも爆玉や閃光玉も、どちらもそう簡単に作れるものではない。受け取ったクナイの数と玉の数から、相当な時間と労力をかけて準備してもらっていたことは想像に難しくなかった。
「このクナイ、藤の毒の配合を少しずつ変えてあるんだ。だからそう簡単に毒を分解することは出来ないよ!鬼の身体に擦りさえすればそれなりの効果はあるはず。だから絶対に外すんじゃないよ!ま、外したとしても塗り込み式の毒じゃないからね。拾って意地でもそいつに当てな!」
「まきをさん」
「この爆玉も、小さいながもかなりのダメージを与えられるはずです!天元さんから使った感触だとか、威力だとかたくさん聞いて、改良を重ねました!絶対に、鈴音ちゃんの身を守ってくれるはずです!だからじゃんじゃん使って下さい!」
「須磨さん」
受け取った麻袋を胸に抱き込み
「…ありがとう…ございます」
言葉にしきれない感謝を込めるようにゆっくりとお礼の言葉を伝えた。
「鈴音これも、忘れず、必ず持って行って」
いつの間に私のそばに来ていたのか、そう言いながら雛鶴さんが、スッと私の方に落ち着いた色の巾着袋を差し出して来た。
「…雛鶴さんまで…」
差し出された巾着袋を受け取り
「…開けてもいいですか?」
私が雛鶴さんにそう尋ねると
「ええ。もちろんよ」
雛鶴さんがニコリと微笑みながらそう答えてくれた。きゅっと締められた口を開き中を覗き見ると
「薄い蓋の入れ物が痛み止め。濃い色が止血剤。使い方は前に説明したからわかるわよね?小さな箱に入ってる、赤っぽい錠剤は造血剤。もし大きな怪我を負うことでもあれば、止血剤と組み合わせて使うこと。念のため解毒剤も入れておいたから必要があったら使ってね」
これまた沢山の応急処置のための道具が入っており
「…私の為に…こんなにも…?」
嬉しさで手が小刻みに震えてしまった。