第5章 名前の知らない感情は
「お前が同行してる任務は、怪我人も殆ど出ねえし、成功率も高い。どんな育て方をしたか教えろって、他の柱のやつに聞かれるほどにな!」
「…そんな話、聞いたことありませんけど」
「まぁ全てはこの派手な祭りの神、宇髄天元様の訓練の賜物だな!…と、言いたいところだが、お前、俺のところに来る前からそんな感じだったらしいぜ?それをより確実にするため、お前に知識とそれを活かす最適な身体の扱い方を授けるようにとお館様は俺にお前を鍛えさせたっつぅわけだ」
ここに来て初めて明かされる事実の数々に、私は目を丸くしながら天元さんの話を聞いていることしか出来ない。
「頸を切ってない割にお前の階級が高いのはそう言う理由だ。頸を切る才能はなくても、お前にはそれ以上の能力がある。俺の継子として、派手に自信を持て!」
天元さんはそう言うと、わしゃわしゃと私の頭を撫でくり回した。
「…っ」
天元さんにそんな風にされるのは初めてのことで、私は嬉しさと恥ずかしさで、いつもの様な悪態がつけなかった。
その時
「天元様ー!頼まれたもの、全て準備できましたぁ!」
「須磨ぁ!あんた少しは持って行きなさいよ!」
別室に篭り何か作業をしていたまきをさんと、須磨さんが2人揃って仲良く(…はないか)現れた。
「お!出来たか!疲れたろ?無理言って悪かったな」
そう言いながら天元さんは立ち上がり、まきをさんと須磨さんの方に近づいて行く。そして2人の頭を、先程私にしたのとは違い、優しい、労うような手つきで優しく撫でる。
「他ならぬ天元様と鈴音ちゃんの為です!腕によりをかけて仕込みました!後でたぁくさんご褒美くださいね!」
「ちょっと須磨ぁ!あんたまた抜け駆けしようとして!あんたより私の方が作った数多いんだからね!?」
「わかったわかった!2人一緒に可愛がってやるよ!だから喧嘩すんなって」
天元さんは右腕にまきをさん、左腕に須磨さんをくっつけた状態で再び私の方にやって来る。