第5章 名前の知らない感情は
稽古をつけてもらうようになってから、天元さんに教わったことと言えば…
クナイの投げ方(それも確実且つ正確に的に当てる)、爆玉等の扱い方(投げるタイミング、爆ぜる範囲の把握、何を使うかの選択)、応急処置(解毒剤や止血剤の使い方)、そして身体の捌き方。
"私はくノ一を目指しているんだっけ?"
と思ってしまうことばかりだ。けれどもそれらは、私が鬼殺にあたる上で役に立つことばかりだった。
「誰もお前が自分で頸を切ることなんか期待しちゃいねぇ。お館様だってそれを承知でお前を俺のところに寄越したんだ」
「…え?それって…天元さんもお館様も…やっぱり私は…鬼と戦う隊士としては…力不足だと思っている…っていうことですよね…?」
天元さんの"期待していない"という言葉に不安になった私がそう尋ねると
「違えよ阿保。人には適材適所ってもんがある。お前は鬼の頸を切るってことに関しては力が足りねぇ部分もあるが、探査だとか仲間の補助だとか、そっちの部分に関しては、柱の力になれるほどの力があるんだよ」
天元さんは呆れた表情を浮かべながらも、私を褒めるような事を言ってくれた。
自ら頸を切ることを期待していないとはっきり言われてしまうのは少し残念な気もするが、自分の力量から考えればそう言われてしまうのも受け入れなければならない。その代わり、私は、私にしか出来ない部分を伸ばしていけばいいと、天元さん、そしてお館様がそう言ってくれているようで、そして私の事を認めてくれているようで、堪らなく嬉しくなった。
「……本当…ですか?」
私がそう尋ねると、天元さんはニヤリと笑い
「お前、自分じゃ分かってねぇだろうから、優しいこの俺様がいいこと教えてやるよ」
「…何です…いいことって?」
何やら含みのある言い方をしながら私の顔をじっと見てきた。