第5章 名前の知らない感情は
じーっと無言で6つの目に見つめられ、何があったかまだ聞かれてもいない筈なのに
「…っあの、実は任務が済んで河原でおにぎりを食べて別れた後、疲れと満腹感からかそこで居眠りしてしまって!和の話では、私が眠ってしまった後に、炎柱様が戻って来てたみたいで、私のことを起こすのは忍びないから和に半刻経ったら起すように言ったらしくて、そのついでにお腹に掛けて行ってくれたらしいです!いい大人が河原で居眠りするなんて恥ずかしいですよね!あはは!」
恥ずかしさを隠すため、必要以上に饒舌になり事の詳細を自らベラベラと喋ってしまった。
「「「………」」」
雛鶴さんまきをさん須磨さんに無言で見つめられ、私はなんとも言えない居心地の悪さを感じ順番に3人の顔を見遣って行く。
…何か…言ってくれた方が助かるんだけど…
そう思っていると
「あのね、鈴音いくらあなたが鬼殺隊士で、私達からも訓練を受けているからって道端で寝てしまうのはよくないわ。万が一、腕を縛られたり、2人以上の男性に襲われでもしたら、いくら貴方でも勝つことはできないのよ?」
雛鶴さんに
「そうだね。そんな場所で居眠りなんかしてたら、どうぞ食べてくださいって言ってんのと同じだよ」
まきをさんに
「もし私が鈴音ちゃんみたいにかわいい子が河原で寝ているのを見つけたら、黙って連れ帰っているところです。だめですよ!」
そして須磨さんに、苦言を呈されてしまった。
「もうしちゃだめよ」
「もうするんじゃないよ」
「もうしたらダメですからね!」
まさかお説教を受けると思っていなかった私は、心の中で
私なんか襲う人いないし
そう思いながらも
「…すみません。以後…気を付けます」
肩をすくめながら謝ることしかできなかった。
「わかってくれたのであれば良いわ」
雛鶴さんは満足げにそう言うと、座卓の上に広げたままでいた風呂敷を手に取った。
「この風呂敷、上等なものだから、どこかにお店の名前が入っていると思うのよね」
そう言いながら空中に広げ、表にしたり裏にしたりと全体の様子を観察している。