第5章 名前の知らない感情は
街の人にこの辺りに水車がある場所はないかと聞き込みを行ったところ、街から少し離れた所に、古くなり、今はもう誰も寄り付かなくなったという御屋敷が有るとの情報を得ることが出来た。それを聞いた私は、不謹慎かとも思えたが”やった!”と喜んでしまい、炎柱様は”やはり荒山の聴力は凄いな”と感心したように言っていたのだった。
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「ここだな」
たどり着いた御屋敷は、なぜこんなところに構えられているのかと疑問に思っていしまうような場所にあり、こんなにも立派であるのに話を聞くまでその存在に気付くことが出来なかったことを疑問に思ってしまうほどだった。
「…こんなにも立派な屋敷を、どうしてこんなところにひっそりと隠すように建てたのでしょう?」
私の問いに炎柱様は
「なにか後ろめたいことでもあったのだろう。それにしても、屋敷全体から鬼の気配が漏れ出ている。本体がどこにいるのか…気配が掴みにくいな」
腕を組み、じっと御屋敷を睨むように見つめながらそう言った。
「…確かに。全体が鬼の気配に包まれています…でも、本体は…音の出どころは1つのはずです」
私はゆっくりとお屋敷にむけ足を動かす。
「待て。危険だ。俺が先に中に入ろう」
私は、そう言って私の事を引き留めようとする炎柱様の方に振り返り
「中に入るつもりはありません。…気配を…探ります」
そう言いながら再び、屋敷の方に向き直り、
ふぅぅぅぅう
と呼吸を深くしていく。
「響の呼吸 参の型 音響明知!」
…屋敷中から満遍なく感じる鬼の気配…そう…まるで屋敷自体が鬼に感じるような…そうすると…迂闊に入るのは…だめ。…やっぱり…気配だけだと…探りずらい。…音。音の方の出所は……屋敷の……真ん中…?…庭が…あるのかな?……そこから…音と気配が……する!!!