第5章 名前の知らない感情は
声は大きくて…距離感おかしくて…圧が凄くて…。でも…最後には…そんなのも気にならなくなっちゃう程に…優しくて…暖かみのある人…だったかも…。
そんなことを考えながらぼんやりしていると
じぃぃぃぃぃい
6つの瞳が、私の顔をじっと覗き込んでいた。
「…っ何…でしょう?」
自分の心の中が透けて見えてしまっているのではないかと思ってしまう程の熱い視線達に、私は狼狽え、言葉に詰まってしまう。
「今の鈴音ちゃんの顔は、とっっっても可愛らしかったです!」
須磨さんが何やら興奮気味にそう言い、
「確かに。そうか…そうだねぇ…」
まきをさんは曖昧なことを言いながらも、私の顔を意味あり気な顔で見て来て、
「その気持ちを、大切にすればいいと思うわ」
雛鶴さんは本当に私の心が読めているのか?と思ってしまうようなことを言っていた。
それらの反応が、私の中に生まれてしまった一つの可能性を、肯定しているような、そんな気がしてならなかった。
「…っもう!そんな生暖かい目で私のことを見るのはやめて下さいぃ!わかってます!自分でも…わかってますからぁ!」
本当は、絶対にわかりたくなんてないんだけど。
そう言いながら頭を抱え、座卓に額をつける私に
「ほら。そんな風に興奮しちゃうと、せっかくの甘酒の効果がなくなっちゃうでしょ?鈴音はもう、明日の任務のために寝た方が良いわ」
雛鶴さんが、そう言いながら私のからになった湯呑みを自分の方に寄せた。
「えぇえ!まだ良いじゃないですかぁ!私、もっとお喋りしたいです!」
そう言いながら須磨さんは私の身体に横からギュッと抱きついて来る。けれども、
「ちょっと須磨ぁ!鈴音は寝坊助なあんたと違って、早起きしなきゃなんないんだからね!わがまま言ってんじゃないよ!」
そう言ってまきをさんが、須磨さんの身体を私から引き剥がそうと、その服をグイグイ引っ張る。
「やだやだ!やめて下さいぃ!生地が伸びちゃうじゃないですかぁ!」
「それが嫌ならさっさとその腕放しな!」
「もう!2人ともやめて」
いつもの2人の争いが始まるも、天元さんがいない今、2人の争いを止めることはそう簡単には出来ない。