第5章 名前の知らない感情は
「街に潜んでる鬼を探して欲しいんだと」
「…探して欲しいって…特別任務として私に任務が回って来るって言うことは、また面倒な能力でも持った鬼なんですか?」
疑問に思った私がそう尋ねると、
「隠や一般隊士がどんなに探しても鬼の痕跡がほとんど見つけられないんだとよ。だが徐々に鬼の被害が広がってる。だから鬼が力を着けて手遅れになる前に、その地区の見廻を担当してる煉獄が任務に就くことになった。で、なるべく早く鬼を見つけられるように、煉獄がお前を補助に寄越して欲しいってお館様に頼んだんだと」
「…そういうこと、ですか」
炎柱様は、いったい私のことをなんだと思っているんだろうか。そして、お館様もどうしてそれを了承してしまうのだろうか。
私…一応、"音柱・宇髄天元の継子"っていう立場にあるはずなんだけどなぁ…。
確かに私は、天元さんに稽古や訓練を施してもらっているから継子と呼ばれてもいいはずなのだ。けれども、天元さんは、
"お前は俺と見廻に行くよりも、沢山任務をこなして、沢山経験を積んだ方がいい"
と言って、私に通常任務に就くことを優先させる。その考えには納得しているし、継子なのに行動を共にさせてもらえないなんて…と、不満に思うことはない。それなのに、炎柱様の補助のために特別任務に就けと言うのは、なにやら違和感のようなものを感じてしまうこともない。
…お館様…いったい何をお考えなんだろう。天元さんに私を鍛えるように言ったり、炎柱様との特別任務に就かせたり…。私に…どうなる事を求めているんだろう…。よく…わからない。
そんなことを考えていると、
「お前また余計なこと考えてんだろ?」
座卓に肘をつき、面倒臭そうな顔をした天元さんが私にそう尋ねてきた。
「…どうして…わかるんですか?」
図星を突かれてしまった私は、言葉に詰まってしまいながらも、天元さんにそう質問を返す。