第4章 雪解け始まる微かな気配
何を言われるのかとドキドキしている私の顔の前に、まきをさんの手がスッと伸びてくると
「…っ痛ぁい!」
まきをさんの綺麗な指が、私のおでこをバチンと容赦なく弾いた。
目を瞑り、弾かれた部分に両手を当て、痛みに耐える私に
「…あんたの気持ちも…あんたがどんな事情を抱えてるかも…よくわかってるから!だからそんな顔して謝んなくて良い!私も…感情的になりすぎて…悪かった…」
まきをさんはそう言った。そして、先程弾いた私のおでこを、今度は優しく撫でてくれる。
…きっとまきをさんは…私が気にしないように、わざとこんな事を…してくれたんだ
じんじんと痛むおでこに当てられた手から、まきをさんの不器用な優しさが伝わってくるようだった。
「…っ…まきをさぁぁぁあん!」
「っちょ…なんだい!?」
先程の、天元さんの見かけによらない気遣いと、まきをさんの不器用な優しさで私の心は完全に臨界点を超えてしまった。
ギュッとまきをさんの豊満な胸に顔を埋め(一瞬フワフワで気持ちがいいと思ってしまったことは絶対に、何があっても誰にも言わない)、私は半泣きになりながら自分の気持ちを吐露する。
「…わかんないんです!私には…この感情の正体がなんなのか!…こんな風に気持ちを乱されて、掻き回されたことなんて…一度もなかったんです!こんなの嫌なんです!私が…私じゃないみたいな…!怖い…怖いんです!こんな気持ち…嫌なんです…っ…まきをさん…」
まきをさんは訳のわからない事を言いながらギュッと縋り付くように抱きつく私の背中を
「あんたねぇ。それじゃあ何が言いたいんだか、わかんないんだよ」
困惑した声でそう言いながら、ポンポンと優しく叩いてくれた。
「ほら鈴音、こっち来て一旦座りましょう。お団子、私達のために買ってきてくれたんでしょう?」
雛鶴さんの声に、まきをさんの胸から顔を上げると、お盆に急須と湯呑みを乗せた雛鶴さんと、
「すごく美味しそうなお団子です!これを食べながら、今回の任務の件についてたくさん話を聞かせてください!私はもう、その鈴音ちゃんの感情とやらに興味津々なんです!」
それはもう楽しそうな表情をして、お皿を4枚持っている須磨さんの姿が目に入った。