第4章 雪解け始まる微かな気配
やっぱり天元さんは、凄く、物凄く、面倒見の良い人なんだと思う。私だったら、こんな生意気で、面倒臭い弟子なんて…そばに置いておきたいとは思わない。
そんなことを考えながら天元さんをじっと見ていると
「俺も暇じゃねぇんだ。さっさと行け」
天元さんがぶっきらぼうな感じでそう言った。
「…はい。それじゃあ…失礼します!」
最後にもう一度天元さんに頭を下げ、私は縁側を駆け出し、雛鶴さんまきをさん須磨さんがいる居間の方へと急ぎ戻った。
「…っまきをさん!…雛鶴さんも、須磨さんも!さっきは本当にすみませんでした!」
襖を開けるや否やものすごい勢いで謝る私に、3人はキョトンとした表情でこちらを見ていた。けれども私はそんなことを気にしてる場合ではなく
「…私…もう今日の任務で…凄く気持ちがぐちゃぐちゃになっちゃって…最後も結局、炎柱様から逃げてくるように帰って来てしまったんです…。今までに感じた事がないような、心がぐらぐらする感じとか…どうしようもなく胸がざわつく感じとか…っどうしていいのかわからなくて…!男の人に…あんな風に優しくされるの…初めてだったんですもん…。おまけに食事に行こうって…!もう…自分でもどうしたらいいか…よくわからなくなってしまったんです…!だから…皆さんの気持ちを考える余裕が…なくて………っ…本当に……ごめんなさい…」
最後の方は、自分に対する情けなさと、まきをさん達に対する申し訳ないと思う気持ちが爆発してしまい、何が言いたいのか、自分でもわからなくなっていた。
そんな私の元に、座っていた場所からからスッと立ち上がり、つかつかと近づいてきたのは
「…っ…まきをさん…」
私が最も謝らなければならない、謝りたいと思っている、まきをさんだった。
まきをさんは、神妙な面持ちで私の目の前で立ち止まり、私の事をじーっと無言で見ている。
私の事を心配してか、須磨さんがこちらに近づいて来ようとしたものの、雛鶴さんがその腕を掴み、須磨さんの顔をじっと見ながら首を左右に振り、それを引き留めた。