第4章 雪解け始まる微かな気配
天元さんのその言葉に、先程私を睨み付けるように見ていたまきをさんの顔が思い出された。
あれはきっと、天元さんに対して取ってしまった私の酷い態度が原因であることも事実だが、自分の選んだ着物を着て、私に、誰かと食事に行ってもらいたかったと言う、まきをさんの気持ちの表れだったのかもしれない。
そう思うと、今すぐまきをさんの元へ行きたいと思った。
「…私…まきをさんに…謝らないと…」
「そうしてやってくれ。ああ見えてあいつ、結構気にしちまうところもあんだよ。お前なんか美味そうなもん持ってたじゃん。それでも食って派手に仲直りでもしとけ」
私はパッと顔を上げ
「…はい!」
そう返事をするや否や、スッと立ち上がり
「皆さんのところに行ってきます!」
居間に続く方向へ身体の向きを変えた。けれども
…そうだ
私は再び天元さんの方に身体の向きを変える。そんな私に天元さんは
「なんだよ?どうかしたか?」
訝しげな顔でそう尋ねてきた。
「天元さん。…さっきは生意気なことを言ってすみませんでした」
私はそう言いながら、天元さんに向かって頭を下げる。
「あぁん?別にわざわざ謝ってもらう事でもねぇよ」
天元さんはそう言いながら、"さっさと行け"と言わんばかりにちょいちょいっと私を追っ払うような仕草をする。けれども、私はそれでは気が済まない。
「いいえ。きちんと…謝らせてください!私、天元さんが、私のためにあんな風に言ってくれたって…本当はわかっていました。でも、今回の任務で、あまりにも自分の頭がごちゃごちゃになってしまって…天元さんに対して、…それに炎柱様に対しても、意地になってしまったんです」
まきをさんに対してもそうだが、私は、今目の前にいる天元さんにも、きちんと謝らなければならない。
「本当に、すみませんでした!そして、こんなどうしようもない私ですが、これからもどうかよろしくお願いします!」
私は一度上げた頭を再び下げ、天元さんにそう言った。
「ま、お前はそう言う奴だわな。安心しろ。俺も煉獄も、そんな小せえ事気にするような器、持っちゃいねぇよ」