第4章 雪解け始まる微かな気配
天元さんの言いたいことはよくわかったし、荒療治とも取れるその方法は、確かにいつまで経っても萎え切らない私には必要な方法なのかもしれない。
「わかりました…もし、次にまた、炎柱様にお誘いいただけるようなことがあれば…今度は逃げずに、きちんと、もっと、炎柱様と話ができるように…努力します。まぁ、そんな機会、次にいつ来るかもわかりませんけど」
私がそう言うと、天元さんはニヤッと笑い、
「どういうつもりか俺にもわからないが、煉獄はお前に興味があるらしい。今回の任務も、実のところお館様のご意向というよりも、あいつの希望らいしぜ?だからそこん所は心配いらねぇだろう」
「…そうだったんですね…」
炎柱様が私に興味がある…?私が、独自の呼吸の使い手だから?それとも、自分に苦手意識を持っている変わった奴だから?
「…興味があるって…なんなんでしょう。というか、それってある意味、職権濫用じゃないですか?」
「んなもん俺が知ったこっちゃねぇわ。気になるんなら、自分で、直接、煉獄に聞け」
天元さんは"自分で、直接"と言う部分を、まるで強調するかのようにわざとゆっくりと言ったように思えた。
「…わかりました」
私はどうしてこんなにも幼稚で、ダメなんだろう。こう決めたと思っても、またすぐに立ち止まりたくなって、元の自分へと戻りたくなる。そんなことを繰り返しても、何も変わらないどころか、どんどんどんどんダメな方向に向かって行くとわかっているのに。
俯き、そんなことを考えていると、
「全くよぉ。せっかくこの俺様が嫁たちと、お前に似合う着物を調達して来たって言うのによ。いい男の前で着なくてどうすんだよ。嫁たちも…特にまきを、がっかりしてるんじゃねぇか?」
そう言いながら天元さんは、俯き、天元さんの方へと向けてしまっていた私の頭頂部に、ポンとその大きな手を置いた。
「…まきをさんが…ですか?」
「あぁ。それ、お前が着てるその着物。あいつが1番最初に見つけたんだぜ?」
「…っ!」
「いつもならよぉ、雛鶴か須磨の方がそういうの選ぶのは上手いんだ」