第4章 雪解け始まる微かな気配
しばらくそうして探るように見られ続け、私は居心地の悪さを誤魔化すようにギュッと自分の着物を掴む。
そんな私に向け天元さんは
「お前、俺が怖いか?」
と、質問を投げかけて来た。
どうしてそんなことを聞かれるんだろう?
そう思いながらも、
「…いいえ。怖くありません」
私は正直に答える。
「それはどうしてだ?俺はお前の嫌いな体格のいい男で、声も派手派手にいい男だ」
「最初は確かに…怖かったです。でも、天元さんは…雛鶴さん、まきをさん、須磨さんをすごく大切にされています。私の父親とは…全然違います。だからもう…怖くありません」
私は、この宇髄天元という人に、自分の知らない世界を教えてもらった。それはもちろん忍の知識や、鬼殺に関することだけではなく、自分の伴侶を慈しみ、心から愛すと言うことも含まれる。そんな人を、どうして怖い、苦手だと思うことがあるだろうか。
「じゃああれだ。お前、弟弟子いたよな?そいつはどうだ?」
「善逸ですか?」
「そうそいつ。もしそいつが、お前より背がデカくなって、今より男臭くなったら、そいつの事怖くなんのか?」
「…なりません…絶対に」
善逸は物凄くうるさいし、声は耳障りだけど、中身はとても優しくて実は頼れる面もある。私が善逸以上に心を許せて、なんでも言える相手は、この先他に現れることなんてない。
そんなことを考えていると、無性に善逸に会いたくなった。
…今、どこで何してるんだろう。
そんな関係のないことを考えている私に
「煉獄はどうだ?」
天元さんがそう質問を投げかけて来た。私はその質問に一気に現実に引き戻される。
「今回あいつと2人で任務に就いて、どうだったよ?あいつのことも、本当のところもう苦手だなんて…思ってねぇんだろ?」
「……」
私はその質問に、すぐに答えることが出来なかった。なぜなら、天元さんの言う通りだったから。
「煉獄はガタイが良くて声も派手にデカい。まさにお前が苦手とする分類だ。だが俺は、あいつの中身をよく知ってる。あいつ程、馬鹿正直でいい奴はいねぇ。お前みたいなうじうじグダグダうるせぇ奴はなぁ、あいつみたいな馬鹿正直で融通の効かねぇ奴と関わった方がいい影響受けんだよ」